日本人の心に沁みる鉄道

 最も寒さが厳しい時期。ここ数年は雪を見ることもなかったせいか、先日来の寒波は特別に寒く、久しぶりに本来の寒い冬になったと感じる。きょうの夕飯はお鍋という方も多いのでは。

 一方で、私たちの生活は急速に本来の姿が消えつつある。コロナの急拡大に伴い、この年末年始は帰省の自粛が呼びかけられ、JRの利用客は前年より7割も減ったという。みどりの窓口を減らす計画も発表された。

 日本人にとって、鉄道は生活に欠かせない交通インフラであると同時に、映画やドラマ、現実においても味わい深い舞台である。ホームに列車が滑り込み、わずかな停車のうちに人が乗り降りし、動き始めれば無情にも止まることはない。

 フォークの名曲「なごり雪」は、駅のホームで別れる男女のドラマ。季節外れの春の雪が降るなか、君を乗せた汽車が動き始める。窓に顔をつけた君は何か言おうとしている。その唇が「さようなら」と動くことが怖くて、下を向いていた。

 倉本聰脚本の名画「駅 STATION」は、健さん演じる北海道警の刑事が、犯人を追いながら女と出会い、冷徹に任務を全うした後、とどまるべきか去るべきか、葛藤しながら黙って列車に乗り込む。また、作家の浅田次郎は地下鉄や列車に読者を乗せ、心温かな異世界に誘う。

 人はけがをしたり病気になって、病院のベッドの上で初めて、昨日までの退屈だった日常がどれほど幸せだったかに気づく。いまは多くの人が、マスクなしに会食し、旅行も自由にできた以前の生活がうそのように思えるのでは。

 コロナが終息したら休みをとって、寅さんのようにのんびり鉄道の旅にでも出ようか。不自由さと寒さの中で、そんな小さな夢にわくわくする。(静)

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