地には平和を 小松左京著

 1945年8月15日正午、天皇陛下がラジオで国民に向けて終戦の詔書を読み上げ、国民はこのいわゆる玉音放送によって日本が敗戦、戦争が終わったことを知りました。本作は8月15日以降も戦争が続いていたら…というヒストリカル・イフの短編です。

 あらすじ クーデターによって首相が暗殺され、玉音放送が放送されず、8月15日を過ぎても終戦を迎えなかった日本。本土防衛隊の少年兵康夫はたった1人、長野県内の山中をさまよっていた。康夫は米軍の物資集積地を襲うが、見張りに気づかれ重傷を負う。自決しようとする康夫の前に「Tマン」と名乗る謎の白人が現れ、康夫は命を救われる。未来の時間管理局から送られてきたTマンは、「この歴史は間違っている」といい、康夫に8月15日で戦争が終わる本当の歴史、この戦争で死なない自分の未来を見せられる。

 康夫が重傷を負ったとき、歴史を改変した未来の狂人が時間管理局に捕まります。その狂人はなぜ、日本がポツダム宣言を受諾せず本土決戦に挑み、3発目の原爆を積んだ爆撃機が大本営の移った信州上空に向け飛び立つ―という歴史に書き換えようとしたのか。狂人は調べに対し、「歴史とは、犠牲を払ったならそれだけのものを得ねばならない。20世紀がのちの歴史に与えた最も大きな影響は中途半端な妥協であり、その日和見主義によって日本は20年もたたずに空文化した平和憲法を手に入れることになった」と主張します。

 「戦争がもう少し長引いていたら、自分が戦場に送られていた」。作者はそう身構えていた自分の戦争に対し、落とし前をつけるためにこの作品を書いたそうです。少年兵康夫のモデルは、同年齢の自分自身。ラストの康夫の幸せな未来、その足下に埋もれた過去を忘れるなという叫びなのでしょう。

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