マスカレード・ナイト 東野圭吾著

 還暦を過ぎても精力的に新作を発表し続ける東野圭吾。木村拓哉と長澤まさみ主演で映画化もされた人気シリーズ「マスカレードシリーズ」の最新作をご紹介します。文庫化されたばかりです。

 物語 ホテルコルテシア東京で優秀なフロントクラークとして評価され、コンシェルジュに抜擢された山岸尚美。宿泊客の多種多様な要望を、すべて自分の裁量で処理しなければならない、困難で重要な役どころだ。どんな理不尽な要求にも「できません」という返答は厳禁。

 早速、気難しそうな女性客から「肖像画や顔写真などのない部屋を、と頼んだのに、窓から駅ビルの顔写真入りポスターが見える。どうしてくれる」とクレームが。知恵を絞って解決し、満足してもらったところで総支配人から呼び出される。出向くと待っていたのは警察官だった。

 練馬区のマンションでペットショップに勤める女性が殺される事件があり、警視庁に「犯人は12月31日の夜、ホテルコルテシア東京で開かれる仮装カウントダウンパーティー『マスカレード・ナイト』に現れる」と密告状が届いた。以前にもここでホテルマンに化け、フロントだった尚美と組んで活躍した新田浩介刑事が潜入して捜査に当たる。今回は尚美ではなく、潜入捜査に大反対しているベテラン男性クラークの氏原がパートナー。銀ぶちメガネを光らせ、新田の行動を監視する。尚美に助けを求めたくなる新田だが、尚美は「プロポーズを絶対成功させる演出を」との依頼と「そのプロポーズをうまく断りたい」との依頼を同時に受けるなど頭の痛い問題を抱え、てんてこ舞い。

 そうこうするうちに12月31日が近づく。カウントダウンパーティーには数百人の客が、ミイラ男、スパイダーマン、マイケル・ジャクソンなどさまざまに仮装して現れる。果たして新田達は犯人を見破れるのか…。

「ホテルではすべての人間が仮面を着けている」とは、前作に登場する言葉。タイトルは人間のあり方を象徴的に表現した言葉ですが、今回は本当にマスカレード(仮面舞踏会)が開かれます。さまざまな仮装の一団がフロントに押し寄せるあたり、著者も映画化をイメージしたのでは、という気がします。ビジュアル的な面白さを想像できるストーリーで、今回は謎解きより、コンシェルジュが難題をどう解決するかという点が見ものでした。

 映画では木村拓哉と長澤まさみが主演。そう知って読むと新田刑事のセリフ回しも仕草も、キムタクがやっているように見えるんですね(でも執筆は映画の撮影より前でした)。

 いつもながら緻密に計算された謎の構造、その中に読者を自然に入り込ませてくれる軽快な書きぶり。安定の面白さといっていいでしょう。

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