日常が非日常に変わる絵画展

 御坊市御坊、旧中川邸の「ぎゃらりーなかがわ」で10月25日まで、面白い絵画展が開かれている。和歌山県立近代美術館と和歌山県福祉事業団の主催する「おでかけ美術館」。和歌山市出身の画家、田中秀介さんの作品41点を展示している◆テーマは「かなたの先日ふみこんで今日」。ちょっと意味を考えてしまうような不思議な言葉だが、それはこの作品展全体の世界観に通じる。順路通り歩きながら絵全体をなんとなく眺めるようなペースでは、真価がまったく味わえない。まず絵をじっくり眺め、タイトルを見る。と、ちょっと意表をつく題がつけられている。その題を頭に置いてもう一度絵を見つめ、さらに作者の一言を読む。何気ない日常の一場面が、ちょっと違って見えてくる◆たとえば、玄関を入ってすぐ目に入る大作「こ」。何の絵だろうとしばしじっと見つめ、タイトルを見ても分からない。作者の言葉を読んで初めて食材だと分かり、タイトルの意味も分かる。ガラスを入れ替えたばかりの扉を大きく描いた「化門(ばけもん)」。養生シート、マスキングテープが無造作に貼られている。それだけなのに、じっと見ていると暗号でも浮かび上がりそうな、意味ありげな画面に見える。路上の「スクールゾーン」の文字、大きな水たまりに映った木々の枝と空、日常の中の風景なのに、見る角度を変えると非日常がそこに現れる◆「目の前の世界を、ちょっと違った目でみる」力は、現実を生き抜くためには非常に有効な力となる。世界が秘める奥行きを知り、平凡に見える世界が実は驚きと感動を隠していると知る手がかり。若い人たちにこそ、ぜひ見てほしい作品展である。(里)

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