怖い顔の話 工藤美代子著

 霊感はさほど強くないはずだが、なぜか奇妙な出来事に遭遇してしまう。本作はノンフィクション作家の著者が、霊感のない夫や友人に笑われながらも、日々の生活の中で体験する不思議な出来事、変な人とのかかわりを淡々と綴ったエッセイ集です。

 収録されている話のほとんどは明るい昼間の出来事。駅から歩いて取材先へ向かう途中、美容院の店主がせっせと生首の髪を切り、いつも玄関先におじいさんが座っている家の前を通るとおじいさんの姿が見えず、中から線香の香りとともに読経が聞こえ、家に帰ると服に線香の粉がついていた。

 表題作は阪神大震災から2年後の神戸で起きたエピソードで、駅から取材先への往復のタクシー運転手の話。行きは初老の男性が震災で息子を亡くし、最近、妻が末期がんを宣告され、東京から来たのなら丸山ワクチンを処方してくれる病院を知らないかという。帰りのタクシーは20代の若い運転手で、母が最近、末期がんを宣告され、行きの運転手と同じく、丸山ワクチンを買える病院を教えてほしいという。

 偶然と片づけるにはあまりに不可思議。これがシンクロニシティ(意味のある偶然)という現象でしょうか。文章はじつにあっさりとしていて、どんくさい自分、ちょっと天然な自分を完全に自覚しながら、「ひょっとしてお化け?」「まさか」と自問しながら、とくにオチもなく不思議なまま終わります。

 著者はいわゆる「見える人」? でもそれはオカルトではなく、人の言動のおかしさに対して本能的に敏感で、周りの人が気づかないレベルの微妙なズレに気づいてしまう〝能力〟の持ち主なのでは。どこか私も共感できるのですが、残念ながら私自身は一般レベルで、これほど強烈な実体験は一度もありません。

関連記事

フォトニュース

  1. クエの恵みに感謝

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 出撃直前、さくら弾機が炎上 極秘扱いで「知られざる特攻機」とも呼ばれたさくら弾機は、直径1・6㍍、…
  2. 飛行機乗りが夢だった 1944年(昭和19)6月、日本はマリアナ沖海戦に敗れてサイパンが陥落し、絶…
  3. 激戦のフィリピンで6年 日米開戦直後の1941年(昭和16)12月22日、日本は米軍の支配下にあっ…
  4. 空襲に怯え、悲痛な思い 大戦末期、空襲に怯え、悲痛な思いをした御坊市島の竹田(旧姓=山﨑)玉枝さん…
  5. 根室空襲、艦載機が猛爆 大東亜戦争末期、制海権を失った日本は北海道まで米軍に押し込まれ、1945年…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  元アニメーターで江戸川乱歩賞作家、真保裕一の「行こう!」シリーズ最新作。今年5月に文庫化されました…
  2.  今回紹介するのは2005年に発行された推理小説家石持浅海の「君の望む死に方」。前作の「扉は閉ざされ…
  3.  映画「ソワレ」が御坊でも好評上映中ですが、タイトルは「夜会」を意味する言葉。そんなタイトルの司馬遼…
  4.  主演ドラマ「半沢直樹」の新シリーズが大ブレイク中の俳優、堺雅人。テレビ雑誌で連載したエッセイ集をご…
  5.  霊感はさほど強くないはずだが、なぜか奇妙な出来事に遭遇してしまう。本作はノンフィクション作家の著者…
ページ上部へ戻る