「無言館」で生き続ける絵

 先日、NHKEテレ「日曜美術館」で戦没画学生の遺作を収めた長野県上田市にある美術館「無言館」が特集された。有間皇子顕彰活動などに取り組む東山の森Ark代表理事、東睦子さん(御坊市出身、東京在住)の企画イベントの映像が、番組の中で使われていた◆「無言館」については数年前、取材先の方に3冊の本を借りて読んだことがあり、心に残っていた。同館に収められている戦没画学生の作品は、館長の窪島誠一郎さんが全国の遺族を一軒一軒回って集めたものだ。大変な時間と労力、思いが込められている◆窪島さんが戦没画学生の遺作を集め始めたのは25年前、戦後50年のこと。出征経験のある画家・野見山暁治氏から「戦死した仲間の絵がこの世から消えていってしまうと思うと残念だ」と聞き、「絵描きは絵さえ残ればまだ死んでいない。間に合うのなら、今からでも集めたい」と思ったという◆東さん企画のトークイベント「魂を紡ぐ」の映像が流れたのは、番組のラスト近く。窪島さんは静かな声で朗読を聞かせた。それは、ある画学生の出征前にモデルとなった女性が50年後に同館を訪れ、ノートに綴った文。「今しか自分には時間が与えられていない 今しかあなたを描く時間が与えられていない」の言葉が、力を持って心を打った◆一人一人がそれぞれに自分だけの情熱をほとばしらせ、それぞれの色、形に結晶させた生の証。その一つ一つに相対する、無言館。決して「戦争の犠牲者」と、彼らを一括りにして捉えはしない◆「明日生きたい、絵を描きたいと言っていながら生きられなかった人の分を君が、俺も生きている。その時間をどう使えばいいか」。番組の最後に言われた窪島さんの言葉は、今を生きるすべての人に向かっている。(里)

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