半夏生の薬草ハンゲショウ
- 2020/7/2
- 日高春秋
梅雨はまだ明けないが暦は水無月から文月へ移り、間もなく本格的な夏が始まろうとしている。今年の7月1日は雑節の一つ「半夏生(はんげしょう)」だった◆暑さが増し健康を損なうことが多いため無病を祈ったのか、各地にこの日の風習が伝わっているという。奈良県の香芝市や大阪の南河内では、農家は小麦を混ぜた餅を作りきな粉で食べる。福井県大野市では、江戸時代に藩主が農民に焼きサバを振る舞ったという逸話があり、今も半夏生には焼きサバを食べるそうだ。近畿の一部ではタコを食べる風習があり、日本コナモン協会はたこ焼きをはじめタコのお好み焼き、タコの唐揚げ、タコ天うどんなどを促進する「蛸半夏生キャンペーン」を行っているという ◆ことし、2020年の前半は、新型コロナウイルスによって生活をことごとく変えられた。「新型コロナは高温多湿に弱い」等のことがいわれ、夏には終息に向かうのではないかと期待とともに思っていたのだが、未だ新たな感染者は増え続けている◆ハンゲショウという植物があり、夏至の頃から半夏生にかけての時期だけ、葉の半分が化粧したように白くなる。ドクダミ科の植物で、利尿剤や腫れ物用の塗り薬など、薬草にも使われた。ドクダミは「毒を矯める(直す)」という意味で、毒を抑える効果が高いという◆江戸時代、伝染病は「疫病」と呼ばれた。暑い時に流行ることが多かったから、それぞれに祈りを込め、夏を乗り切る工夫をした。ウイルスとの戦いは長期戦の様相を呈し、共存を考える段階といわれるが、魔法のようにそれを無力化してくれる特効薬ができないものかと、疫神退散を祈った昔の日本人のように願いたくなる。(里)