亡き俳優が遺した一つの仕事

 30歳の若さでこの世を去った俳優、三浦春馬さん。訃報に息をのむほど驚いたのは、そのほんの少し前に見たテレビ番組の印象が、あまりにも鮮やかに残っていたからだ◆7月4日放映分の日本テレビ系「世界一受けたい授業!」で、特別講師として日本の伝統工芸を語った。美貌の人気若手俳優と伝統工芸とは意外な組み合わせのようだが、三浦さんは雑誌の企画で、全47都道府県の伝統工芸を4年間かけて巡っていた。その連載をまとめた著書が、自身の30歳の誕生日でもあった今年4月5日に発売。タイトルは「日本製」という◆番組では、京都の茶筒や金網細工、滋賀の和ろうそくなどが紹介されていた。茶筒のふたは手を放すと「すーっ」と自然なスピードでゆっくり落ちていき、音もなくぴったり閉まる。高度な技術でその絶妙な感覚が生まれる。パスタ缶、コーヒー缶など現代に合った商品を開発していることも紹介され、「茶筒型のスピーカー」というユニークな品も実演された。そのような案を果敢に試みる若手後継者の心意気を、三浦さんは熱く語っていた◆筆者が彼の本業を目にしたのは3年前のNHK大河「おんな城主直虎」だけだったが、外見の美しさだけではない存在感のある演技が印象的だった。ブロードウェイミュージカル日本版の出演が決まった時、「自分は日本のことを何も知らない」と、殺陣師について勉強したという。その時に伝統の技への情熱も生まれたのだろうか。若手後継者が目を赤くして「本当に興味を持っていなければできないような質問を幾つもしてくれた」と悼む姿を報道で見た◆どんな生も、長短にかかわらずこの世に何物かを遺す。本業と異なる分野ではあるが、彼は確実に一つの立派な仕事を遺したと思う。(里)

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