発表なくとも経験は消えない

 中学・高校の休校、部活動自粛に伴い週1回のコーナー「チームはおまかせ! キャプテン」も休載していたが、5月31日付から再開。全国文化祭出場20回を誇る日高高校箏曲部の3年生部長に登場してもらった◆規定の行数には収まりきらないエピソードもいろいろ語ってくれた。最初に舞台で演奏した時は緊張のあまり琴柱(ことじ)の位置を間違え、音が変わっていたがそれにも気付かなかったこと。厳しい練習の合間に先生が古文の助動詞を教えてくれたが、その時間が息抜きのように楽しかったこと等々◆「とにかく琴の音の美しさが好き」で「ただ弾くのが楽しい」という時期を過ぎると、やがて皆と音を合わせる難しさ等、技術面の課題に直面。スランプに陥る。抜け出したきっかけが特にあったわけではなく、「たくさん弾くこと」を心がけているうちに、気がついた時にはいつの間にか抜けていた。この逸話は特に興味深かった。筆者には反復練習が大事と聞くといつも思い出す言葉が2つあり、井上靖の自伝的小説に出てくる「練習量が全てを決定する柔道」、アメリカのギタリストの「巧くなる秘訣はとにかく弾くこと。ミュージシャンも画家も作家も一緒さ」という言葉。どの分野でもその心は一つなのだなと納得できた◆高知県で開かれるはずだった今年の全国高校総合文化祭は、オンラインでの開催が模索されている。来年の出場権を競う和歌山県高校文化祭邦楽部門も現時点では開催が不透明。だが、開催の有無がどうなっても「『勝負曲』は絶対完成させたい」という◆発表できるかどうかにかかわらず、一つのことに打ち込んだという事実、経験、記憶は消えない。10代という年齢に刻んだすべての経験は、その後の長い人生の下敷きになる。(里)

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