
日高川町松瀬、日高川漁業協同組合(大杉達組合長)は、今年度から海産遡上アユ再生プロジェクトに取り組む。近年、毎年のように襲来する台風の影響などで遊漁料収入が落ち込み、厳しい自己財源の中、広く一般に寄付を呼びかけ、事業費の捻出を目指すところが大きな特徴。集まった資金では産卵場の整備や親アユの養成、放流を行い、ピーク時から10分の1以下の年もみられるほど激減している天然遡上の回復を図り、アユ資源を復活させる。
同漁協によると、日高川では40年ほど前まで年間1000万匹を超える天然遡上が確認されたが、1985年ごろから低調に推移。近年では100万匹に満たない年もあり、11年9月の紀伊半島大水害の翌年は27万匹まで激減した。04年から親魚の放流を開始し、天然遡上の回復に取り組んできたが、厳しい組合運営の中、継続して一定量の放流を行っていくのは困難になり、新プロジェクトを打ち出した。
プロジェクトの概要は、御坊市野口~日高川町小熊地先に産卵しやすいよう産卵場所を造成し、特別採捕された稚アユを購入、半年ほど養成後、産卵場へ放流する。産卵場の整備は400平方㍍、アユの放流量は2000㌔(約3万匹)で、この計画を毎年続けて天然資源の復活を図る。事業費は年間500万円を見込んでいる。
同漁協では、これまでの親魚放流や養成などで資源回復の手法は確立できているとし、毎年2000㌔の親魚放流で天然遡上を安定的に500万匹以上にしたい考え。「秋に雨が少ないと産卵親魚の降下が妨げられ、産卵数が少なくなり、年によってアユ資源が安定しない。遡上を安定化させるためには産卵場で養成親魚を放流し、産卵数の積極的増大を図り、自然産卵に付加することが必要」と説明している。
寄付は個人、団体、企業を問わず、最低金額の設定もない。プロジェクトの成果が出てくればアユの加工品贈呈、遊漁券割引など寄付者への優待も検討するという。
同漁協は「アユ資源が増大し、遊漁者ら日高川を利用する人が増えれば広く経済波及効果が見込まれ、地域活性化にもつながるので、一般の方々に協力を呼びかけることにしました。地域も年齢も問いません。事業の趣旨に賛同してくれる方はご連絡ください」とPRしている。
寄付の仕方など詳しくは同漁協℡0738―52―0224。
写真=遡上する稚アユ(先月31日、日高川町の若野堰提)