無観客にダメージ実感

 ミステリー、時代小説、ファンタジーなど、どんなジャンルも面白い売れっ子の宮部みゆきさんは意外にも、小中学校時代は先生から作文で褒められたことがなく、高校生になって初めて、国語の先生に褒めてもらったそうだ。

 小6で書いた読書感想文は「これは読書感想文ではない。この本の宣伝文です」といわれたが、高3の国語の先生はその話を聞いて、「それはあなたが人に読ませようと思って書いているから。将来は小説家かライターになれるかもしれない」といったという。

 クリエイターはやはり、人に作品を読んでもらい、見て、聴いてもらってナンボ。どんなに素晴らしい傑作をものしても、興味を持って買ってくれる人がいなければメシは食えず、受け手を意識してこそ創作意欲が沸き、腕が磨かれる。

 目の前の相手との一瞬の力勝負の格闘家やアスリートはどうか。先が見えない新型コロナ禍、無観客の春場所がスタートした。NHKのテレビ中継の印象はやはりというか、予想以上というか、歓声のない静寂の土俵があまりに寒々しい。

 力士もほとんどは相撲をとりづらいようで、「寂しい」「闘争心が沸かない」などと戸惑いを隠さない。初日はアナウンサー、正面解説の北の富士、向正面の舞の海も、最後まで妙に辛気臭かった。

 まさかのオリンピックの延期、中止も現実味を帯びてきた。作家もスポーツ選手も、その他どんな職業においても、送り手は受け手に最高の作品、パフォーマンスを見せようという気力がなくては成長できない。

 その両者が一体となる生の空間を奪ってしまうウイルスは、感染していない人も含め、全人類にダメージを与えていることを実感する。(静)

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