
2019年度第4回市民教養講座が18日、御坊市民文化会館大ホールで開かれた。「帝都物語」等で知られる作家の荒俣宏さんが「人生を楽しんだ偉人・奇人」をテーマに語り、「鞍馬天狗」の作者で父が御坊市出身の大佛(おさらぎ)次郎、「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみの水木しげるらについて、映像を見せながら紹介した。
荒俣さんは「私は不思議なものがたくさんある和歌山県が大好きなんです」と昨年も道成寺を訪れたことを話し、「私は団塊の世代なんですが、子ども時代は遊びといえばチャンバラごっこかターザンごっこ。ダントツに人気のあったのが『鞍馬天狗』でした」と、当時大活躍した大佛次郎について語った。
先祖は宮大工で道成寺の建立にも携わり、「大佛先生は生前に道成寺を訪れ、『ここが先祖がつくった道成寺』と感激していたそうです」と、御坊市でもあまり知られていないエピソードを紹介。それまで時代劇といえばかたき討ちとか型にはまったものしかなかったところ、悪人を次々に倒していく一大ヒーローをつくりあげたのは大きな功績とし、「月光仮面や仮面ライダー、あらゆるヒーロー物の元祖を創ったのが御坊市ゆかりの大佛次郎。これは誇っていいことじゃないでしょうか」と訴えた。
他の作品「赤穂浪士」「天皇の世紀」についても「四十七士は『忠臣』『義士』と呼ばれ、『浪士』と表現したのは大佛さんが最初。また、明治天皇を主人公に小説を書くなんて誰も考えなかった。好きなことしか書かなかった。こういう人は強い」と、ごみのコレクションに熱中した池田文痴庵、反骨のジャーナリスト宮武外骨、「老人力」を提唱した作家赤瀬川原平らも紹介。最後に「ぼくが知ってる一番の道楽者」と水木しげるとの交友を懐かしそうに語り、「『道楽』は元々仏教の言葉で『道を楽しむ』こと。悟りを開くために修行し努力する、そのこと自体を楽しむ。三昧(ざんまい)の境地です」と、実生活の役に立たなくても好きなものに熱中して人生を楽しむことを勧めた。
写真=大佛次郎ら偉人の生涯を語る荒俣さん