
印南町印南、岡本殖産社長の岡本宏之さん(55)が、亡父・崇さん(享年85)の遺志を引き継ぎ、県赤十字血液センターに献血運搬車を寄贈。21日には上富田町の同センター紀南出張所で寄贈式があり、7台目となる運搬車「幸美号」が披露された。崇さんは愛娘を小児がんで亡くしてから運搬車を6台寄贈。宏之さん自身も在りし日の妹をはっきりと覚えており、「幸美号が血の尊さをつないでほしい」と願いを込めた。
崇さんは1975年6月、最愛の娘・幸美ちゃん(当時3歳3カ月)を小児がんで亡くし、手術の際に多くの人から輸血を受けたことに感謝の気持ちを込めて、同年9月、当時貴重だった血液運搬車を寄贈。「幸美号」と名付けられ、以来、83年、91年、99年、07年、13年と合計6台を寄贈してきた。講演活動なども含めて献血推進に貢献したとして12年には厚生労働大臣感謝状を受賞している。昨年2月に他界した。
崇さんが亡くなったあと、父の思いを感じるようになった宏之さんは、きょうだい(妹2人、弟1人)に相談し、運搬車を寄贈することにした。寄贈式には宏之さんと妻の真由美さん(56)が出席。同センターの住友伸一所長に目録を手渡した。宏之さんは「当時私は小学5年生で、妹の幸美が小児がんでなくなるという非常に悲しい出来事があり、父のことを思い出すと、見ていられないほどの悲しみを味わっていた。私もまさか自分の妹が3歳で亡くなるなんて想像だにしていなかった」と当時を振り返り、「幸美号が幸美の魂と一緒に血液の、命の絆をつないでいってくれているという思いが父にはあったようです。血の尊さを幸美号がつないでいってくれるかと思うと、我々きょうだいこれほどの喜びはない。末永くよろしくお願いします」とあいさつした。住友所長は「崇さんが感じておられたように、私も人と人が支え合う心のつながりが献血のあるべき姿だと思う。幸美号を、人と人が支え合う心のつながった血液製剤を患者さんに届けるため使用させていただきます」と謝辞を述べた。
写真=7台目幸美号の前で目録を手渡す宏之さん㊥と真由美さん