何が出るか、究極の玉手箱
- 2019/12/9
- 日高春秋
「来年のいまごろ、はやぶさ2が地球に持ち帰ってくる物質はどんなものなのか。これまでに見たどの隕石とも違う気もする。それによって何が分かるのか分からない。これは科学に大事な『なぜ』の究極のかたちであって、期待度は100%です」。
8日に開かれた日高高校同窓会全員総会で、約10年前にはやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った物質を分析したチームの1人、同校出身の圦本尚義北海道大教授がはやぶさ2のサンプルリターンについて、興奮を抑えきれない様子で話されていた。
はやぶさ2は2014年12月に打ち上げられ、約4年半後の18年6月、火星と木星の間にある小惑星リュウグウに到達した。9月には天体の表面を移動、観測する探査ローバーを投下し、世界で初めてとなる小惑星への着陸、移動、写真撮影を成功させた。
今年2月、1回目のタッチダウン(接地)を行い、表面の岩石のサンプル採取に成功。4月にはよりフレッシュなサンプルを得るため、地表に弾丸をぶつけて人工クレーターの造成に成功。さらに7月、2度目のタッチダウンとサンプル採取に成功した。
地球からの距離はざっと2憶8000万㌔、光速でも15分かかるという。そんなはるかかなたへ探査機を到達させるだけでも想像を超えるが、ひとつ間違えば290億円の事業費と10年の苦労が一瞬にして灰塵に帰すプロジェクトメンバーの緊張感たるや、どれほどのものか。
地球生命の起源の手がかりを教えてくれると期待されるはやぶさ2。圦本教授はいまやそれ以上に、何が分かるのかさえ分からないことの方がエキサイティングだという。科学者として究極の玉手箱、それを最初に開ける地球人になるのかもしれない。(静)