目標までの過程にこそ意味が

 いまから22年前、ロンドンで開かれたエルヴィス・プレスリー没後20年記念ロックフェスに、日本人の矢沢永吉が乗り込んだ。当時47歳。圧倒的なパフォーマンスで8万人の観客を熱狂させた。

 チャカ・カーン、ボン・ジョヴィらビッグな共演者は、リハで顔を合わせるまで誰も矢沢を知らなかった。客もほぼ全員が「誰?」「バイクのメーカー?」という完全アウェー状態だった。

 ロッド・スチュワートは永ちゃんが登場するまで露骨にシカトしていたが、永ちゃんが「Don’t Be Cruel」をビシッと決めるや、ステージ上ですり寄ってきて、「君、すごいね。今度一緒にツアーやろうよ!」と大興奮だった。

 「敵地」を意味するアウェーという言い方は適切ではないが、ミュージシャンが初めての会場で初めての規模のライブをやるというのはどんな心境か。美浜町出身で鹿児島を拠点とする宮井紀行が11月17日、ふるさと和歌山で初のホール単独ライブに挑む(10面に記事)。

 会場は御坊市民文化会館、キャパは900。鹿児島では1500人、2000人を動員するが、900というのはなかなか。さらに、来年1月26日には、5000人規模の鹿児島アリーナも決定している。正直、「大丈夫か」とも思うが、周りにいわれてやめるようでは何もできない。

 永ちゃんはロンドンのステージのあと、「一線がかっこいいわけではなく、そこへ到達するまでの過程にこそ大きな意味がある」と語った。スタートはボロボロでも、目標に到達するまでにいろんなしがらみを乗り越えて自分が磨かれるという。

 御坊のライブは本人と幼なじみが手売りで走り回っている。出会いとしがらみの中で、会うたびに成長しているのを感じる。(静)

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