印南町は災害に強い高台の宅地化を見据えた未来投資事業を進めていく。将来的に住宅地に転用できる高台の農地などに町がライフラインとなる水道管を敷設することで、民間事業者による宅地開発の呼び水にする事業。今年度は印南と西ノ地の2カ所で計画しており、行政コストをあまりかけない、独自の若者定住策として注目されている。
従来、自治体の宅地開発と言えば、自治体の予算で用地購入や造成工事、売却を行ってきたが、未来投資事業では町が必要最小限の整備をすることで民間活力をうまく引き出し、行政のコストダウンを図る。
今年度計画している印南地内の高台(本郷コミュニティセンター南)は海抜20㍍弱。付近一帯は農地で、現在農免道路の改良工事が行われており、今後工事の進捗(しんちょく)をみながら沿線に延長410㍍の水道管を敷設する。予算は700万円。西ノ地地内の高台(切目中学校北)は海抜18・5㍍。こちらも農地となっており、付近の町道沿い延長460㍍に水道管を設置する。予算は950万円。いずれも国道42号に近い海岸部だが、津波浸水エリアに入っておらず、土砂災害の心配もない上、日当たり良好、交通アクセスのよい高台。水道管の工事は今年度末までに完成させ、民間事業者に宅地開発を委ねる。宅地化すれば、2カ所合わせて30戸程度が建設できる見通し。来年度以降も別の高台で未来投資事業を行っていく。
企画政策課では「地震による津波被害が心配される中、『家を建てるなら高台』というニーズが高まっているが、海岸線に高台の宅地がない。道と水道、排水が整っていれば、民間事業者は宅地開発に乗り出してくれるはず。農地に住宅用の水道管を敷設する発想はあまりないと思うが、未来への投資という実験ケースとして取り組んでいく」と話している。