京都アニメーションの事件に思う

 京都アニメーション製作の作品をテレビで見たことはなかったが、愛読していたミステリー「氷菓」が同社でアニメ化され、好評だと知ってインターネットの動画で一部を見た。多感な高校生達を描く繊細なみずみずしい表現、自然描写の美しさは素晴らしかった。「聲の形」など、見てみたいと思った作品は他にも数多くあった◆あの放火殺人事件から3週間が経つ。アニメや漫画は筆者にとって特別な存在で、報道以来この事件のことがいつも頭のどこかにある。あまりといえばあまりの事態に、言うべき言葉などまったく見つからない。ニュースを見ていると、献花の女性が「なんでこんなにひどいことを」と叫ぶように言い、嗚咽した。多くの人の気持ちそのままだと思った◆先日、遺族の了承を得て、10名の犠牲者の名が公表された。「氷菓」の監督の名もその中にあった。「犯人は過去だけではなく未来を奪った」というコメントがあったが、失われたものの大きさは、文字通り計り知れない。アメリカでは立て続けに銃乱射事件が発生した。人を個々人としてではなく、集団の枠に当てはめて見ることしかできない人が増えているのではないか◆世界中から寄せられた寄付金は10億円を超えたという。単純に「好き」という気持ちは、強いられたものではないだけに、強い。世界の多くの国の人々が作品を通じ、その気持ちを日本へ抱いてくれている。どんな政治力をもってしても不可能なその事実を、一地方のアニメスタジオがかるがると成し遂げてくれた。繊細な作品に込められた膨大なエネルギーが、海を越えて多くの人の心に届いていた◆献花の人の輪は、連日続いている。人々が心を寄せ続けることで、多少なりとも空白は埋めていくことができるのだろうか。(里)

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