いま、求められる地域の力

 日本の社会には、民生児童委員や人権擁護委員といった社会福祉のために活動するボランティアがいる。法務大臣委嘱の保護司もその一つで、先日、元日高保護司会会長の天野孝二氏(77)に話をうかがった。

 保護司といえば、社会を明るくする運動や薬物乱用防止の街頭啓発の取材でお会いするが、実際は刑務所を仮釈放、少年院を仮退院した人、刑の執行猶予を受けた人の保護観察が主な仕事である。

 毎月2回、保護観察対象者と会って生活状況等を確認し、悩みや心配の相談に応じながら、再犯・非行防止へ就学や就職を支援するのだが、相手がなかなか心を開いてくれず、苦労することも少なくない。

 対象者が少年の場合、保護司は自分を監視する「敵」と思い込み、日々の生活に関する質問にもうそをつくことが多く、自分の味方だと理解してもらうまで、半年以上かかることもあるという。

 少年少女に限らず大人も、罪を犯した理由のもとをただせば、愛情の足りない親にいきつく。わが子の学校生活、交友関係、成績、食事、健康にはなんら関心がなく、家族のことよりも自分の快楽・娯楽が最優先。人間の親としての行動ができない。

 そんな家庭環境で毎日腹をすかせ、万引きを繰り返した少年もそうだった。面接ではうそをつかれ、心を開いてくれなかったが、天野さんが少年を心配し、つい声を荒げて怒ったとき、少年は親にはなかった愛情を感じ、心を開いてくれたという。

 かつては建設会社などがあったが、いま、日高地方には元受刑者や非行少年の事情を理解し、従業員として雇う民間の協力雇用主がいない。無職の人の再犯率は、有職者の3倍。人の立ち直りを支えるため、地域の力が求められている。(静)

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