防犯重視で失われる地域との交流

 散歩していると、見ず知らずの子どもから「おはようございます」「さようなら」などと、あいさつされることがある。取材で学校などを訪れても、児童らが気さくに近寄って来て話しかけてくれることもある。とても気持ちがいいし、すがすがしい気分にさせてくれる。こうした行為は人間性を育み、礼儀やマナーを身に付けるのだろう。学校と地域社会のつながりを深めることにもなる。

 2001年に発生した大阪教育大学付属池田小学校の事件から全国的に教育方針が変わった。事件前は「地域に開かれた学校」を目指していたが、事件後は安全対策を重視する「閉ざされた学校」へと向かいつつある。近年、子どもたちが狙われる事件が相次いでいる現状では、やむを得ない部分もあるかもしれない。それが世界水準でもあり、日本のように小さな子どもたちがランドセルを背負って通学するのは外国人から見ると驚くそうだ。

 先月末には川崎市で登校中の児童らが刃物で襲われるという事件が発生した。わずか十数秒の犯行だったが、小学6年生の女児と外務省の男性職員の2人が死亡、18人が負傷した。現場には教頭もいたが、いきなりの出来事でどうすることもできなかったのだろう。

 「日本は平和ボケしている」。よく耳にする言葉だが、防犯対策を重視することで失われることも多い。川崎市の事件で、あえて対策を挙げるとすれば、保護者が家から学校まで外部の人と触れずに車で送り届けることぐらいしかないのではないか。それは地域とのつながりを希薄にさせ、子どもたちの声も地域から遠ざける。悔しいが、この先、「地域に開かれた学校」を目指すことはあり得ないのかもしれない。(雄)

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