回復へ、まずは相談を

 川崎市の住宅街で、通学バス待ちの小学生の集団が刃物を持った男に襲われた。6年生の女の子が首を刺され、別の児童の父親(39)は心臓を刺され死亡。17人が重軽傷を負った。犯人の男は現場で自分の首を切って自殺した。

 男は51歳。家では80代の伯父、伯母と暮らしていたが、長期のひきこもり状態で、伯父夫婦とはほとんど会話がなかったという。リュックに刃物を忍ばせ、電車で現場まで行っての凶行は、覚悟の上の計画的犯行だったのだろう。

 一般に、ひきこもり状態にある男性の暴力は、依存する両親(主に母親)に向けられることが多いといわれ、不特定多数の他人に危害を加えることなどまずない。今回の凶悪な事件を起こした男がひきこもり状態にあったのは間違いないが、犯罪とひきこもりを同列には置けない。

 報道により当事者はさらに肩身が狭い思いをし、親はわが子の将来に不安が大きくなっているのではないか。病気ではない彼らに有効な薬はないが、頼りになる専門家集団が動き始めた。

 美浜町和田に拠点を置くNPO法人ヴィダ・リブレがそれで、理事長の精神科医宮西照夫さんを中心に、臨床心理士、精神保健福祉士らがスクラムを組み、自身もひきこもり経験のあるメンタルサポーターが当事者の頑なな心を開かせる。

 宮西さんは長年の研究と経験を基に、訪問型の活動、家族療法、集団精神療法など独自の回復支援プログラムを開発した。参加した若者の8割は居場所と仲間を得て成長し、1年半もすれば外の世界へ踏み出すようになるという。

 今年度からは行政とも連携し、日高地方の市町が事業に乗り出している(1面に記事)。苦しんでおられる本人、ご家族はまずは相談を。(静)

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