グッド・バイ 太宰治著 新潮文庫

 「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文庫を探して買ってみました。
終戦後から1948年の死去まで3年間に書かれた16編を収めた短編集で、表題作は未完の絶筆。朝日新聞と朝日評論に第13回まで連載したところで、著者は玉川上水で愛人と心中を遂げたのでした。

内容 文芸雑誌編集長の田島周二は、妻と子を田舎に疎開させて東京で暮らしながら闇商売に手を染め、一財産を築いた。戦後3年を経て世の中も落ち着いてきたので、妻子を呼び寄せてまともに暮らそうと決心。ついては、10人近く養っている愛人たちと手を切らねばならない。

田島は一計を案じ、とびきりのすごい美人を恋人に仕立てて「この女と結婚するから別れてくれ」と頼んで回ることに決める。「すごい美人」である闇屋仲間のキヌ子に恋人役を依頼。しかしキヌ子は並みの女ではなく、田島は財産を散々使われ、振り回される羽目になる…。

著者はこの作品を書き始める直前、代表作となる「人間失格」を書き上げています。「今の自分には幸福も不幸もありません。ただ一切は過ぎていきます」というラスト近くの虚無的な独白が有名な、シリアスな長編ですが、本作品の方は情死に臨もうとしている暗さなどは感じさせないユーモア小説。
実は私は、太宰作品はなんだかカッコつけてるみたいで熱さや深さがあまり感じられなくて、「走れメロス」以外はキライなのですが、あらためて読んでみると、意外にも情熱のこもったような言葉が散見されたり、敗戦直後の空気を色濃く感じさせる独自の文学性をも発散しているようで、また違う目で読んでみてもいいかなと思えました。

関連記事

フォトニュース

  1. がんばりまっしょい!

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 出撃直前、さくら弾機が炎上 極秘扱いで「知られざる特攻機」とも呼ばれたさくら弾機は、直径1・6㍍、…
  2. 飛行機乗りが夢だった 1944年(昭和19)6月、日本はマリアナ沖海戦に敗れてサイパンが陥落し、絶…
  3. 激戦のフィリピンで6年 日米開戦直後の1941年(昭和16)12月22日、日本は米軍の支配下にあっ…
  4. 空襲に怯え、悲痛な思い 大戦末期、空襲に怯え、悲痛な思いをした御坊市島の竹田(旧姓=山﨑)玉枝さん…
  5. 根室空襲、艦載機が猛爆 大東亜戦争末期、制海権を失った日本は北海道まで米軍に押し込まれ、1945年…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  元アニメーターで江戸川乱歩賞作家、真保裕一の「行こう!」シリーズ最新作。今年5月に文庫化されました…
  2.  今回紹介するのは2005年に発行された推理小説家石持浅海の「君の望む死に方」。前作の「扉は閉ざされ…
  3.  映画「ソワレ」が御坊でも好評上映中ですが、タイトルは「夜会」を意味する言葉。そんなタイトルの司馬遼…
  4.  主演ドラマ「半沢直樹」の新シリーズが大ブレイク中の俳優、堺雅人。テレビ雑誌で連載したエッセイ集をご…
  5.  霊感はさほど強くないはずだが、なぜか奇妙な出来事に遭遇してしまう。本作はノンフィクション作家の著者…
ページ上部へ戻る