屍人荘の殺人(今村昌弘著 東京創元社)

 今回紹介するのは今村昌弘の「屍人荘の殺人」。人気作家が絶賛した作品で、神木隆之介主演で映画化も進められており、年内の公開が予定されている。
 主人公は神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲。推理好きの会長、明智恭介が興味を持ったのは、脅迫状が届くなどのいわくつきの映画研究部の夏合宿。同じ大学の探偵少女、剣崎比留子の3人で映画研究部員やOBらが集まる合宿に参加するためペンション紫湛荘を訪ねる。
 ペンションに集まったのは管理人を含め14人の男女。それぞれ思惑を抱えながらも和やかに展開するストーリーだが、肝試し中にゾンビが現れるという急展開を迎える。ゾンビは近くで行われていたロックフェスの観客で、物語の途中にフェスで化学兵器のようなものを用いたテロ活動の描写があるので、彼らの犯行というのは読んでいて推測できる。
 数人がゾンビに襲われたが生き残った合宿参加者は、階段にバリケードを作りペンションに立てこもる。混乱と不安が続く中、それぞれの部屋で眠りにつくが、翌朝、1人が死体となって発見される。体中にはゾンビに噛みつかれたような歯形が残る。一方で、ドアには意味深なメッセージが残される。肉をかみ切った歯形からして人間の犯行ではないことがうかがえるが、一方で知能の低いゾンビが手紙を残すことは考えられない。考えを巡らせて推理する主人公たちだったが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。
 「〇〇荘の殺人」とよくあるタイトル、中身もよくあるミステリーと思ったが、ゾンビ登場には驚かされた。さらにそのゾンビを使いクローズドサークル状態をつくり出すという発想も面白い。その中で起こる連続殺人。読み進むにつれどんどん引き込まれ、一気に読んでしまいたくなる作品です。

関連記事

フォトニュース

  1. ぜひ皆さんで食べてください

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 根室空襲、艦載機が猛爆 大東亜戦争末期、制海権を失った日本は北海道まで米軍に押し込まれ、1945年…
  2. B29へ決死の体当たり 欧州で第2次世界大戦が始まったのを受け、米軍は1939年(昭和14)11月…
  3. 3月17日の神戸大空襲に遭遇 アニメ映画化された野坂昭如の小説「火垂るの墓」、手塚治虫の「アド…
  4. 大阪空襲の直前に帰郷 印南町山口に生まれ、現在は美浜町吉原(新浜)に住む芝﨑シヅヱさん。父五郎右衛…
  5. 乳飲み子抱え上海から引き揚げ 御坊市島に暮らす98歳の嘉美(よしみ)さんは、1921年(大正1…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  「悪人」「怒り」等、多くの作品が映画化されている吉田修一。最新の映画化作品は藤原竜也、竹内涼真ら出…
  2.  週刊少年ジャンプに連載中の漫画「Dr.STONE(ドクターストーン)」を紹介します。  …
  3.  短歌をやっている母の本棚に20年ほど前からあった著者のサイン入り歌集ですが、今回初めて中身を読みま…
  4.  「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文…
  5.  作者の生まれは明治18年。明治45年に執筆され、初版は大正10年とかなり古いですが、繊細な描写が特…
ページ上部へ戻る