公益財団法人日本美術院の第74回春の院展で、日高町小坂、日本画家で日本美術院院友の鈴木薫さん(69)の作品「階上へ」と、日高川町鐘巻、県美術家協会会員の小野千寿子さん(58)の作品「白秋」がそろって入選した。鈴木さんは春と秋の院展合わせて連続18回目、小野さんは4年ぶり2回目の入選。ともに日本画の最高峰での快挙に喜んでいる。
鈴木さんは日本美術院院友に推挙されたあとも挑戦を続け、日本画鈴蘭会の指導者、県展審査員などとしても活躍。今回の作品サイズは104×104㌢。大阪の百貨店の風景で、前面にエスカレーターを描き、奥にある店舗との遠近感の美しさを表現。長女清子さんをモデルに上の階に上がろうとする人物も描き、エスカレーターの動きを連想させる作品に仕上げた。入選に際して「筆跡を残さない描き方をしていますが、絵には引き算も必要。今後はどこかふわっと抜けるところを絵に表現するのも課題です。また、日高地方に受け継がれている日本画の灯りを消すことのないよう少しでも力になりたいと思います」と笑顔をみせている。
日本臨床美術協会資格認定会員や日本美術院研究会員でもある小野さんの作品は、150×75㌢。昨年11月に県展で最優秀賞を受賞した作品と同じテーマで新たに描いた。三女万智子さんをモデルにして背景に木を描き、季節の変わり目をふと感じる瞬間を表現。春の院展での入選は初めてで、「ただただうれしい思いでいっぱいです。前回入選からいろいろ絵の描く方向性を模索して自分の思っていることが正しいのか不安になることもありましたが、入選できて間違っていないことが分かりました」と喜んでいる。
日本美術院は故平山郁夫氏らを輩出した歴史ある日本画壇。院展の関西展は、京都が5月29日から6月3日まで高島屋京都店、大阪が6月5日から6月10日まで阪急うめだ本店、神戸が9月4日から9月9日までそごう神戸店で開かれる。
写真=鈴木さんの「階上へ」㊤と小野さんの「白秋」