そして、星の輝く夜がくる

真山仁著 講談社 1500円(税別)

東日本大震災から、11日で丸8年を迎えます。巨大な地震と津波により、一瞬にしてまちが変わり果てたあの日から2900日余り。本作は、自身も阪神・淡路大震災で被災した「ハゲタカ」シリーズの真山仁がいまから5年前、3年の月日をかけて紡ぎ出した希望と祈りの物語です。

物語 大震災の爪痕が生々しく残る東北の小学校に、神戸から応援教師として派遣されてきた教師小野寺。かつて、自身も阪神・淡路大震災で妻と子を亡くした経験を持つを彼は、校長の強い要望で6年2組を受け持つことになり、「まいど!」と陽気な関西弁で子どもたちに寄り添う。クラスには津波で親やきょうだいを失った子、住む家を失った子もいれば、福島から転校してきてひそかに「ゲンパツ」とあだ名をつけられた東電社員の子どももいる。小野寺は「被災地の子どもは遠慮なんかするな」「我慢なんかするな」と、常に子どもたちの側に立って傷ついた心を癒やそうとするが、そのむき出しの本音が保護者や仲間の教師、ボランティアとの間で摩擦を起こす。
「子どもの視点から見える震災を書きたかった」というのがこの小説の出発点。子どもが大人に対する不満や怒りをストレートにぶつける学級新聞をめぐる騒動を描く「わがんね新聞」、東電社員の子どもと友達の交流を描く「〝ゲンパツ〟が来た!」、津波が来た際、教え子の手を引きながら、予期せぬアクシデントで手を放してしまい、その児童が亡くなった若い女性教師の苦悩を描く「さくら」など6つの短編で構成され、どれも日本人にならではの思いやり、気遣いの微妙なバランスがテーマです。

忘れたくても忘れられず、忘れたくなくても忘れてしまう震災の記憶。神戸や東北の衝撃が薄れつつあるすべての日本人に読んでほしい作品です。 (静)

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