ふるさとで生きる幸せ
- 2019/2/19
- 日高春秋
年度末、友人の1人が4月から東京へ転勤するという話を聞いた。家族を残しての単身赴任で、都心に部屋を借り、仕事は関東周辺県や北陸方面への日帰り出張が多くなるとか。もはや死語の「企業戦士」という言葉を思い出す。
東京に企業の本社が集中し、社員はある程度の年齢、キャリアに達すれば幹部として地方に分散する支店を転勤して回る日本。友人の場合は地方から東京への逆パターンだが、どちらにしろ家族の生活を考えると一家で引っ越しは難しい。
終身雇用や年功序列の昇給・昇格が当たり前だった時代は、単身赴任も一種の「美徳」だったが、業績も給料も右肩上がりが幻と消え、人事評価、働き方、休み方も変革、多様化が進むなか、日本人の意識もずいぶん変わりつつある。
人は何に人生の幸福を感じるか。かつての「上昇こそ成功」のモーレツ社員の自己犠牲も、いまや懐メロのような昭和の浪花節。地方が衰退、外国人の手がなければ経済が回らず、日本人は個人の幸福を追求しながらも先行きは見通せない。
生まれ育ったふるさとで働き、家族とともに生活する。日本人の多くがそんな人生に幸福を感じるようにならねば、地方のまちは生き残れない。そのためには企業の本社分散、政府関係機能の移転を強引にでも推し進め、学歴重視社会も変わらねばならない。
都市一極集中是正策の一つとして始まったふるさと納税も、制度上、返礼品の競争が過熱するのは当然。商品券で寄付を募るのも、国が規制をかけて監視するのもどうかと思うが、何よりも重要なのは魅力あるまちづくりの競争である。
選挙で選ばれた首長、議員は、住民がふるさとで生きる幸せを感じられるよう、まちづくりの議論を。(静)