ふるさとで生きる幸せ

 年度末、友人の1人が4月から東京へ転勤するという話を聞いた。家族を残しての単身赴任で、都心に部屋を借り、仕事は関東周辺県や北陸方面への日帰り出張が多くなるとか。もはや死語の「企業戦士」という言葉を思い出す。

 東京に企業の本社が集中し、社員はある程度の年齢、キャリアに達すれば幹部として地方に分散する支店を転勤して回る日本。友人の場合は地方から東京への逆パターンだが、どちらにしろ家族の生活を考えると一家で引っ越しは難しい。

 終身雇用や年功序列の昇給・昇格が当たり前だった時代は、単身赴任も一種の「美徳」だったが、業績も給料も右肩上がりが幻と消え、人事評価、働き方、休み方も変革、多様化が進むなか、日本人の意識もずいぶん変わりつつある。

 人は何に人生の幸福を感じるか。かつての「上昇こそ成功」のモーレツ社員の自己犠牲も、いまや懐メロのような昭和の浪花節。地方が衰退、外国人の手がなければ経済が回らず、日本人は個人の幸福を追求しながらも先行きは見通せない。

 生まれ育ったふるさとで働き、家族とともに生活する。日本人の多くがそんな人生に幸福を感じるようにならねば、地方のまちは生き残れない。そのためには企業の本社分散、政府関係機能の移転を強引にでも推し進め、学歴重視社会も変わらねばならない。

 都市一極集中是正策の一つとして始まったふるさと納税も、制度上、返礼品の競争が過熱するのは当然。商品券で寄付を募るのも、国が規制をかけて監視するのもどうかと思うが、何よりも重要なのは魅力あるまちづくりの競争である。

 選挙で選ばれた首長、議員は、住民がふるさとで生きる幸せを感じられるよう、まちづくりの議論を。(静)

関連記事

フォトニュース

  1. あ、浮いた浮いた~

写真集

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 乳飲み子抱え上海から引き揚げ 御坊市島に暮らす98歳の嘉美(よしみ)さんは、1921年(大正1…
  2. 34年前、活字にならなかった一冊の本 活字の本として出版されることのなかった、一冊の戦争体験集…
  3. 船団護衛の海防艦で南方へ 1923年(大正12)8月19日、夏目英一さん(95)は日高郡旧野口…
  4. 千人針と250人分の寄せ書き発見 「あれ、これは何やろ」 1999年(平成11)8月、母の薫(か…
  5. 飛行兵志願も母が反対 小瀬輔造さん(89)は1930年(昭和5)1月7日、日高川町…

日高地方などのイベント情報

  1. 南部梅林

    2月 1 @ 12:00 AM - 3月 1 @ 12:00 AM

Twitter

書籍レビュー

  1.  「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文…
  2.  作者の生まれは明治18年。明治45年に執筆され、初版は大正10年とかなり古いですが、繊細な描写が特…
  3.  6月19日は桜桃忌。芥川龍之介の河童忌、司馬遼太郎の菜の花忌ほど有名ではありませんが、太宰治の命日…
  4.  銀行に7年間勤務した経験を持ち、「半沢直樹」「陸王」「ルーズヴェルト・ゲーム」など人気ドラマの原作…
  5.  幅が狭く、カーブが続き、前から車がくればすれ違うこともできず、一つ間違えば谷底に転落してしまう…。…
ページ上部へ戻る