勝者の涙と謙虚さに感動
- 2019/1/30
- 日高春秋
大相撲初場所はモンゴル出身、関脇玉鷲の初優勝で幕を閉じた。横綱稀勢の里の3連敗、引退に始まり、負傷休場続出の大荒れとなったが、横綱の引退騒動を吹き飛ばす若手の台頭が印象深い15日間だった。
序盤は錦木、北勝富士、阿武咲、碧山ら平幕力士の健闘が光った。とくに錦木は初日から2大関、1横綱を破る活躍で、不戦勝を含め4連勝で迎えた5日目、同じ全勝の横綱白鵬を土俵際でかわし、金星の軍配が上がった。
しかし、微妙な相撲は物言いがついて取り直しとなり、二度目の勝負は攻め込みながらも最後にいなされ、土俵下に転がり落ちた。立ち合いの鋭さは五分、地味ながらたしかな錦木の成長を感じたが、終わってみれば7勝8敗。あと一歩のところで三役を逃した。
白鵬を追い詰めた力士はほかにもいる。4日目の北勝富士は顔を何発も張られながら一方的に押し込んだが、土俵際で逆転された。物言いがつき、ビデオのスロー映像はほぼ同体に見え、解説北の富士も思わず「もう一丁」となったが、軍配は覆らなかった。
6日目までに2横綱が休場、3大関も序盤から黒星先行でふがいないなか、先場所優勝の貴景勝、玉鷲の関脇2人が終盤に白鵬を撃破し、連日、大入りの国技館を沸かせた。3月の大阪は大関を狙うこの2人を軸に、けがから復活の御嶽海、初の三役が濃厚の北勝富士、阿武咲、朝乃山らに期待がかかる。
不祥事続きの大相撲とはいえ、土俵の上の真剣勝負はファンを熱狂させる。圧倒的な力とうまさを兼ね備えた横綱、大関に対し、小さな平幕力士がいかに立ち向かうか。先週末、テニスの大坂なおみ、玉鷲の涙と謙虚さに感動した人も多いはず。日本出身力士はさらに奮起を。(静)