着陸間近の「はやぶさ2」
- 2018/12/17
- 日高春秋
日高川町出身、北海道大学大学院理学研究院教授の圦本尚義さんが、故郷のかわべ天文公園で初めて講演を行った。8月に美浜町で行われた講演も取材したが、今回は、9月に「はやぶさ2」から探査機ミネルバが小惑星リュウグウへ放出されてから初めての講演である◆落とされた2機のミネルバが地表でバウンドしながら撮った写真は、当時ニュースで紹介。この夜の講演でも大きく映し出された。リュウグウの地平線とまばゆい太陽の光がいっぱいに映り、感動的な美しさである。全国紙で見た時には本当に「はっ」と心を奪われた。3年半という時間をかけ、32億㌔の旅の果てに目的地の上空に到達した「はやぶさ2」。その光に満ちた映像は、ミネルバ自身が、前人未到の地に到達した感動を表現しているかのような錯覚を覚えさせてくれた◆直径900㍍ほど、ほんの小さな天体である小惑星リュウグウ。重力も極めて小さく、その上で歩くことはできるが、走ると宇宙空間へ飛び出してしまう。「はやぶさ2」はその上空20㌔に浮かび、地球へデータを送ってくる。その結果、思ったより地面がでこぼこで着陸は難しいと分かった。難題だが、講演によるとどうやら着陸ポイントの見当はつきそうだという◆プロジェクトの順調な進行状況は「映画にはなりませんね」と圦本さんは笑いを誘ったが、映画にできないほどスムーズに計画を進めること、多くの条件をクリアして着実に前進することがどれほどの偉業か。一つ一つ作業の説明を聴くと凄さが胸に迫る◆ミネルバは知恵の女神の名である。32億㌔の彼方にある光景を目の当たりにできる、その事実の価値をあらためて思う。人間の叡智と情熱は、深遠な宇宙の謎にどこまで迫れるのだろうか。(里)