県立医大 樹状細胞ワクチンの治験施設拡大

 国内初のすい臓がんに対する樹状細胞ワクチン開発に向けた医師主導治験を進めている県立医科大外科学第二講座の山上裕機教授らの研究チームは26日、これまでの治療の安全性が評価委員会により確認され、治験の実施施設を全国の11医療機関に拡大したと発表した。

 すい臓がんは診断時、すでに遠隔転移などの高度進行状態で発見されるケースが少なくなく、最も治療が難しいといわれるがんの一種。国内のがん全体の死亡率が下がっているなか、すい臓がんは上昇傾向にあり、現在、死亡者数は肺がん、胃がん、結腸がんに次いで4番目に多いが、将来的には1位になる予測もあるという。

 樹状細胞ワクチンとは、患者のリンパ球のみを採取する成分献血により、がんを攻撃するT細胞(CTL)を活性化させる樹状細胞を体外で熟成させ、それにがんの目印となるがん抗原(ペプチド)を取り込ませた細胞。これをわきの下などの皮膚に注射することでCTLが活性化し、がん細胞のみを狙って効率的に攻撃する。

 県立医科大は樹状細胞ワクチンの高度な製造技術を持つテラファーマ株式会社(本社・東京)と手を組み、昨年5月から治験登録患者への投与を開始。手術、化学療法(抗がん剤)、放射線の標準治療で効果が見込めないすい臓がん患者を対象に、ワクチンの実薬群とプラセボ(偽薬)群に分かれる二重盲検法(どちらも抗がん剤投与あり)の治験を進め、このほど実薬投与6人に重い副作用がないなどの安全性が効果安全性評価委員会の中間解析によって確認された。

 これを受け、県立医科大はより多くの施設で同じ治験を進める体制づくりをPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)に提出。今後は北海道の手稲渓仁会病院、千葉県がんセンター、名古屋大医学部附属病院、大阪府立病院機構大阪国際がんセンターなどすい臓がん治療に造詣の深い10施設が加わって治験を実施できる体制が整った。本年度中にはさらに6施設が参加する見通し。

 これまで和歌山県立医科大が行った治験では、抗がん剤のみで治療した患者の生存期間中央値が5・8カ月であるのに対し、樹状細胞ワクチンをプラスして治療した患者は8・1カ月まで伸びた結果が得られている。今後は新たに参加する全国の医療機関で計185人の患者の治験データを集め、生存期間の変動などをさらに詳しく分析、検証し、2022年度中には新薬としての製造販売承認の申請をしたいという。

 研究チームリーダーの山上教授は「この樹状細胞ワクチンは再生医療等製品であり、産官学の知的、人的連携によるオールジャパンの治験を進め、新たながん治療の切り札として、一日も早く患者さんに届けたい」と話している。

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