無理なら「名誉ある撤退」を

 「戦争は始めるよりも、終わらせる方が難しい。シンプルなメッセージだが、これは海外でも受け入れられるのでは」。3年前、映画「日本のいちばん長い日」の公開前に行われた外国特派員協会の記者会見で、主演の役所広司が作品の海外展開について問われ、答えた。

 映画は大東亜戦争で建軍以来、初の敗戦が決定的となった陸軍、国家の決断の難しさを描く。米軍が沖縄に上陸し、原爆を落とされながら、陸軍はなお本土決戦を強く主張。その裏には「これだけの犠牲を払って、いまさら後戻りはできない…」という意地があった。

 勝者の米国は28年後、ベトナム戦争で敗北を喫した。ニクソン大統領が「名誉ある撤退」を公約に掲げて当選以降、和平交渉に並行して敵の補給ルートの隣国への侵攻を続け、名誉=国益のある撤退(敗戦)までじつに7年もの時間を要した。

 安倍首相が予定通り来年10月から10%に引き上げると表明した消費税について、凍結を求める声が高まっている。景気の腰折れを防ぐための一部減税やポイント還元、地域振興券など単年度の対策に、過去の経験も踏まえ賛成の声は少ない。

 住宅や車を買う金持ちのための減税? 田舎のお年寄りが経営する小売店でキャッシュレス? 社会保障の財源を消費税で賄うシステム自体を疑問視する専門家も多く、まかり間違えば支持率が急落、春の統一選や夏の参院選への打撃は避けられず、本丸の憲法改正もできない恐れがある。

 そうこういっているうちに突然、株価が急落した。小さな揺れでも津波はくる。政治家も社長も発言に責任を持つことは当然だが、意地を張って勝算のない作戦を進めるぐらいなら、前言を翻して撤退する方が美しくもあり、傷は浅い。(静)

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