金田一家三代の教え

 御坊市等主催の市民教養講座、第4回講師は金田一秀穂氏。言語学者・ロシア語学者の金田一京助氏を祖父に、言語学者・日本語学者の金田一春彦氏を父に持つ三代目の言語学者だ◆4月の本欄にも書いたが、中1の時に春彦氏の講演を聴いた。春のように穏やかで、微笑しながら話を進める上品な紳士だった。湯上がりとアフターバスの違いなど、日本語ならではの風情を解説してくれた◆京助氏についても思い出がある。読書部だった中学時代、顧問の先生がとってくれていた「中学生文学」で氏の登場する短編を読んだ。主人公は内地の人間に引け目を感じるアイヌの少女幸恵。文字を持たないアイヌ民族が口伝えしてきた叙事詩「ユーカラ」の研究で訪れた京助氏に、幸恵は問う。偉い先生が一生懸命研究するような値打ちが本当にユーカラにあるのか、と。京助氏は「あなた方はね、幸恵さん、そうじゃないか…」と言ってしばらく黙り、水がせきを切ってほとばしるように、伝えられてきた言葉の中に民族の誇るべき宝があることを熱く語るのだった。この場面は印象的で、春彦氏の講演も「あの京助さんの息子さん」と思って聴いていた◆秀穂氏は春彦氏と雰囲気がまったく違い、笑顔も語り口もざっくばらんで庶民的。親しみやすさ全開である。「言葉は生きているのだから変わっていくのが当たり前。『正しい言葉』にこだわらず、人が心地よく過ごすための『心地よい言葉』を使おう」とする講演は深く腑に落ちた◆京助氏からは民族の誇りとしての言葉の「命」、春彦氏からは独特の美しさや風情など言葉の「魅力」、そして秀穂氏からは使い手の気持ちに寄り添うべき言葉の「心」。言葉とは何か、どう使っていくべきか、三代かけて教えてもらった。(里)

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