ストロングマンが争うなかで
- 2018/11/16
- 日高春秋
戦う男の「強さ」は政治家に求められる重要な資質である。米国、中国、ロシア、フィリピン、ブラジル…世界はいま、「ストロングマン」と呼ばれる戦う強権的指導者が台頭してきている。
政治家を選挙で選び、多数決で政策を決定する民主主義は、少数派も含め広範な意見をくみ取る反面、利害の調整に時間がかかりすぎる。両院がねじれると重要な法案、予算も通らず、時間とともに国益が損なわれてしまう。
独断専行、即断即決のストロングマンは、法や人権を無視しても強引に物事を前に進める。国民はその強さとスピードに熱狂、暴走しても民主国家は選挙がブレーキとなるが、選挙のない独裁国家は抑える術がない。
民主主義が衰退、独裁主義が勃興しつつあるといわれるなか、自由と民主主義、人権を尊重するわが日本の安倍首相は、価値観を共有する米国とともに、「自由で開かれたインド太平洋構想」を進めようとしている。
狙いは中国の排除、経済破綻。日米が軸となって豪州、インド、さらには英、仏も巻き込み、巨大な経済圏構築を進める。言葉は「構想」とやわらかいが、実質は戦いのための「戦略」。「緩やかな封じ込めだ」という指摘もある。
安倍首相は14日、プーチン大統領と会談し、東方経済フォーラムでも話題となった平和条約に関連して、北方領土問題を「互いの任期内に必ず終止符を打つ強い意志を完全に共有した」という。2島か4島か、国内議論が熱を帯び始めた。
かつて、アラスカを米国に売ったロシアは再び崩壊の危機。米国はINF全廃条約からの脱退を表明し、本気で中国を潰そうとしている。せめぎ合うストロングマン3人からすり寄られる安倍首相、日本に勝機はあるか。(静)