現代社会の中にある〝ホンモノ〟

 先日、伝統の技術や産業の担い手、地域振興などさまざまな分野で〝ホンモノ〟の活動を続けている個人を表彰する「第7回COREZO(コレゾ)賞」の表彰式が田辺市龍神村の宿泊施設「季楽里龍神」で行われた。席上では46人が受賞、うち地元の龍神からも刀づくりや地域おこしなどに取り組む4人と1夫婦が選ばれた。

 式では受賞者ひとりひとりの活動内容が紹介された。利益を考えると非合理だが、昔から伝わる手法にこだわりを持った人たちも多い。受賞者で㈲会社タイコウ(東京)の稲葉泰三さんもその1人。会場ではカツオ節をカンナで「シャカシャカ」と削り、その場で昆布と合わせて煮立てただし汁をつくって振る舞ってくれた。味わわせていただくと、それだけでスープとして飲めるぐらいにうまみが凝縮されたやさしい味だった。「これこそ、『コレゾ』にふさわしい」と感じながら試飲させてもらった。

 経済と効率が優先される時代。昔から伝わる手法の良さを引き継いでいる職人が貴重な存在になっている。進んだ科学技術を生かした未来にも好奇心がそそられる。しかし、同じように伝統的な産業や文化を求める人たちがいるのも事実。観光客らが古い文化遺産などを訪れるのはその証といえるだろう。

 空飛ぶ自動車の開発、宇宙旅行など夢のようなことが現実になろうとする時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。50年、100年後の未来はいままでの人類が経験したことのないことがたくさん待っているはずだ。しかし、伝統を守り抜く人たちの心意気だけは、受け継いでいかなければならない。この先どんなに時代が変わっても人間が感じる〝ホンモノ〟の豊かさは、それほど変わらないのではないか。(雄)

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