オオカミ少年の教訓

 イソップ寓話のオオカミ少年では、羊飼いの少年が「オオカミが来た」とうそをつく。村人たちは武器を持って戦おうとするが、徒労に終わる。何度も繰り返すうちに村人たちは信用しなくなり、本当にオオカミが来て村の羊が全て食べられた、というものである。

 嘘をつき続けると、本当のことを言っても信じてもらえなくなるという教訓だが、見方を変えてみよう。村の羊、おそらく村人たちが飼育していた羊がオオカミに食べられたのは、だれが悪いのか。当然、うそをついた少年は悪いが、村人にも責任があるのではないか。例えば、日頃からオオカミ襲来に対する万全の対策を取っていなかったこと、少年の情報をうのみにするだけでなく、うそか本当か自分で見極める目や判断材料を持っていなかったことなど。うそをつく少年を周りの大人が正しい方向に導いてやることなく放っておいたのも問題だ。

 近年、よく似たような話で心配なことがある。先日の西日本豪雨や西進の珍台風では、甚大な被害が出たところもあるが、本県は幸いにも被害が軽かった。ただ、大安売りとでも言わんばかりに、各地域で警報や避難情報を発令。猛暑の中、そのたびに食料などを持って避難所へ行く高齢者らは大変である。結果的に被害が少なかったのはいいが、連続するとオオカミ少年の話になりかねない。

 気象庁や自治体をオオカミ少年呼ばわりするつもりは毛頭ない。予報技術を一段と向上させ、的確な情報の提供を望むだけある。その上でやはり住民も災害とどう向き合い、いつ避難すべきタイミングなのかなど、自ら判断、行動できる材料をそろえておくことが大切である。(吉)

関連記事

フォトニュース

  1. お年寄りはどこがいい?

写真集

戦争体験者に聞く 終わらざる夏

  1. 乳飲み子抱え上海から引き揚げ 御坊市島に暮らす98歳の嘉美(よしみ)さんは、1921年(大正1…
  2. 34年前、活字にならなかった一冊の本 活字の本として出版されることのなかった、一冊の戦争体験集…
  3. 船団護衛の海防艦で南方へ 1923年(大正12)8月19日、夏目英一さん(95)は日高郡旧野口…
  4. 千人針と250人分の寄せ書き発見 「あれ、これは何やろ」 1999年(平成11)8月、母の薫(か…
  5. 飛行兵志願も母が反対 小瀬輔造さん(89)は1930年(昭和5)1月7日、日高川町…

日高地方などのイベント情報

現在予定されているイベントはありません。

Twitter

書籍レビュー

  1.  「バイバイ、ブラックバード」を読むと、原典に当たる太宰治の「グッド・バイ」が読みたくなったので、文…
  2.  作者の生まれは明治18年。明治45年に執筆され、初版は大正10年とかなり古いですが、繊細な描写が特…
  3.  6月19日は桜桃忌。芥川龍之介の河童忌、司馬遼太郎の菜の花忌ほど有名ではありませんが、太宰治の命日…
  4.  銀行に7年間勤務した経験を持ち、「半沢直樹」「陸王」「ルーズヴェルト・ゲーム」など人気ドラマの原作…
  5.  幅が狭く、カーブが続き、前から車がくればすれ違うこともできず、一つ間違えば谷底に転落してしまう…。…
ページ上部へ戻る