御坊市の中宮院院長で一般社団法人東洋はり医学会関西の会長を務める中野正得さん(38)が、左手と右足のツボを刺激することで認知機能改善に効果があることを実証し、大阪で開催された第67回全日本鍼灸学会で発表した。10人以上のモニターでの実験では、全員が認知症テストの正解率が格段に上がったという。「認知症予防に効果が期待でき、今後広めていきたい」と意欲を示している。
中野さんは湯川町小松原で「はり・灸・小児はり 中宮院」を開院しており、10年以上通ってくれている高齢者が多い中、変わらず健康で認知症になる人が少ないことに着目。
「鍼灸治療が認知症予防に効果があるのでは」と仮説を立て、2年ほど前から中野さんらが中心となって東洋はり医学会関西で研究を重ねてきた。脳に直接つながるツボの中から左手の側面の1カ所、右足のくるぶし近くの1カ所のツボを刺激することで、認知機能が改善されることが分かり、御坊市のサービス付き高齢者向け住宅「ケアビレッジたから」と、御坊シルバーハイムの2施設の協力を得て入居者や利用者十数人にモニターになってもらって効果を測定。広く利用されている30秒間で12個の単語を暗記してもらう「長谷川式認知症機能テスト」を行った後、ツボにテスターを張り刺激を与えて再び同じテストを行った。刺激前は正解率が平均31%だったのに対し、刺激後は60%と大きく改善したことを数字で示した。
学会では、東洋医学の視点から認知症の症状などを説明したあと、認知機能に改善効果があるツボを紹介。会場では、参加者の中から一人に協力してもらって同じテストを行い、実際に正解率が上がり歓声が湧き起こった。中野さんは「協力いただいた2施設の職員さん、利用者さんには本当に感謝しています。ツボはたくさんありますが、学会ではみんながすぐにできて分かりやすい2カ所を紹介しました。非常に即効性があり、継続的に行うことで認知症の予防につながることが期待できるのではないかと考えています。予防法の一つのアプローチとしてこれから広めていきたい」と話している。