アニメ監督高畑勲氏を追悼
- 2018/4/13
- 日高春秋
「火垂るの墓」などで知られるアニメ映画監督の高畑勲氏が他界した。享年82歳◆ジブリ作品は好きだが、高畑氏の監督作品で観たのは「火垂るの墓」「おもひでぽろぽろ」だけ。ジブリファンというよりは宮崎駿ファンと自認し、他の監督作品は積極的には観なかった。「火垂るの墓」は凄い作品だが、14歳の少年と4歳の幼女がたどる運命はあまりに過酷で観るのがつらく、公開時には劇場で泣きながら「となりのトトロ」と同時上映にせずそれぞれじっくり見せてほしかった、としきりに思っていた◆40年以上前、テレビアニメがまだまだ低くみられていた時代に「アルプスの少女ハイジ」はスイスロケを敢行して制作。山小屋から外まで何歩あるかなど測り、徹底して説得力のある作画を心がけた。作品づくりには妥協を許さず、時間も予算も使えるだけ使い、納得いくまでとことんやる。「火垂るの墓」は「子どもに見せるには過酷すぎる」とクレームがくることを覚悟の上で世に問うたという。だが、結果的にはそのようなクレームはなかった◆宮崎氏より年齢的には5歳上で、先輩に当たる。日本のアニメ草創期を共に駆け抜けてきた2人。作風や作品の方向性は大きく異なるが、「宮崎駿が一番作品を見せたいのは高畑勲」だとスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫氏が発言していた◆多くの報道に接するほどに、もっと劇場で観ればよかったとの思いが募る。好みの作品は、栄養となって自分を肥え太らせてくれる。一方、好みでなくとも優れた力のある作品に出会うと、時として自分ではできない方向から姿勢を叩き直してくれる。それは創り手の熱が込められた作品に限るが、高畑氏は間違いなくそんな熱を内に持った創り手の一人だったのだろう。(里)