67歳の中野さん 小学校卒業証書に笑顔

 初めて手にした、念願の小学校卒業証書――。小学校2年生から18歳までブラジルで暮らし、学校で学ぶことのできなかった中野さふみさん(67)=御坊市荊木=に、湯川小学校の卒業証書が贈られた。中野さんは証書を手に「私にもやっと母校ができました」と喜んでいる。
 中野さんの一家は1959年、「南米ブラジル和歌山県人移民募集」に応募してブラジルへ渡航。幼い中野さんは、ブラジルとは日本のどこかだと思っていたという。移民船「あるぜんちな丸」で40日間かけてリオデジャネイロに入港。現地では、イタリア人の経営するコーヒー園で家族労働者として働いた。8歳の中野さんも働き、勉強する暇などなく文字はまったく覚えられなかった。
 68年、18歳の時に帰国。大阪のスピーカー工場に勤め、給料で小学校の参考書、辞書、漢和辞典などを買い、働きながら寮生活で文字を覚えた。銭湯から帰ってから、電気スタンドに風呂敷をかぶせるなどして同室の人の迷惑にならないように、風呂敷が熱くなって火事を起こさないようにと注意しながら勉強に励んだという。
 現在はシェーグレン症候群という難病や脊柱間狭窄症を患い、ヘルパーらの助けを借りながら一人暮らし。字を覚えてからすっかり書くことが好きになり、毎日パソコンを使って日々の思いなどをつづる。「有川志穂」のペンネームで日高新報にも随筆を投稿し、掲載されている。
 「小学校を卒業したかった」という思いはずっと持ち続けており、昨年10月、知人を通じて市にそれを伝えたところ、中野さんが卒業するはずだった「昭和38年3月22日」の日付、当時の玉置錬太郎校長の名で卒業証書が発行。自宅に届けられた。
 中野さんは「この年になってやっと母校ができたという喜びで胸がいっぱいです。私にも後輩がいると思うと、本当にうれしい思いがこみあげてきます」と笑顔で話している。

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