聖地のお寺に奉納します

 日高町小浦出身、仏像を制作する仏師で浄土宗僧侶の前田昌宏さん(45)=京都市在住=が、仏教の聖地、インドのブッダガヤにある「仏心寺」に奉納するため彫っていた「普賢菩薩像」が完成。3月4日に現地で開眼法要が行われる。世界平和や日印の交流を願って同寺に仏像を寄贈するのは3体目で、18年越しの一連の制作活動が完了した。
 前田さんは日高中2年のとき、父の智教さん(70)が住職を務める小浦の浄土宗浄土院に祭られていた薬師如来像が盗まれるという事件に遭遇。像は戻ってくることはなく、「自分の手で仏様を彫り、元の状態に安置できないものか」と仏師の道を志した。高野山高に進学後、偶然にも仏師の美術講師に出会い、3年間学校近くの工房へ通い詰めた。仏教大在学中も僧侶の資格を取得する勉強、修行をしながら彫刻刀を握り、卒業後はドライバーの仕事をする傍ら腕を磨いた。30歳ごろから正式に仏師として活動を始め、いまは仏像の制作、販売、修復のほか、京都、大阪、神戸、日高町など8カ所で彫刻教室の講師も務めている。
 仏心寺はインド北部のビハール州ガヤ区にあり、2001年に日本の人たちの寄進で建立。インド政府から正式な許可を受け、現地の子どもたちの学校の役割を果たしているほか、世界中の修行をしたい人たちへの宿泊場所や日印の交流を深めるための施設として利用されている。前田さんは同寺の建立前年に京都市の知恩院で開催されたポストカード原画展で仏心寺建立の発起人と出会い、自身の制作した仏像を見せたところ、「ぜひ本尊を作ってほしい」と依頼を受けたのが「仏心寺とのご縁」。1体目の仏像として01年からヒバの木を材料にしたガンダーラ様式の釈迦座像を制作し、03年に完成、同寺へ奉納した。2体目となる文殊菩薩像は、釈迦座像の両脇に安置される仏像(両脇侍=りょうわきじ)の1体で、15年に完成、奉納。最終となる3体目の普賢菩薩像も両脇侍の1体で、ヒバを材料にした高さ約80㌢の座像。半眼の優しい表情で、左手には如意を持ち、背中には「光背(こうはい)」も取り付け、現地で好まれる明るい色合に仕上げた。高さ約60㌢の白象の台座も作った。
 17、18日には浄土院で檀家や地元住民らにお披露目。訪れた人が行った写仏は仏像の中に奉納する。開眼法要に向けて前田さんや両親、関係者ら約30人は、1日に成田空港から出発して現地を訪問。法要にはインドやチベット、ブータン、タイなどから多くの僧侶が集まり、導師は父の智教住職が務める。
 「平和、平等、自由、交流」の願いを込めながら、忙しい仕事の合間を縫ってボランティアで行ってきた仏像制作が完了したことで前田さんは、「宗派がいろいろあっても、仏に手を合わせて平和を願う気持ちは同じ。長い歳月がかかったが、祈りの対象となる3体の仏像を制作できたことは大きな誇りです。制作に際しては多くの人に一のみを入れてもらっており、みんなの思いも詰まっています」と感慨深げに話している。

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