遺された教訓に学ぶ
- 2018/2/9
- 日高春秋
「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」。戦国最強といわれた武田軍団、武田信玄の言葉として「甲陽軍鑑」に記されている、勝負における人の働きの大切さを説く格言で、現代では企業経営で人材の力や人とのつながりの大切さを表現するために引用される。
インターネットで調べると、適材適所で個人の才能を十分に発揮できる集団をつくることが大切で「その人材こそが城であり石垣であり堀である」との教訓。さらに信玄は「信頼してこそ人は尽くしてくれるもの」という言葉も残しており、口だけでなく時に頭を下げて自分から先に人を信じようと心がけたといわれている。
先日、印南町商工会の講演会があり、取材した。法政大学講師で往来物研究家の小泉吉永さんが「江戸に学ぶ人育て人づくり~事業継承の極意~」をテーマに講演。主に江戸時代の人材育成に関する資料を読み解いた。紀州徳川家の初代、徳川頼宣作の「父母状」を紹介。「父母への孝行」「法度遵守」「分限」「倹約」「家督出精」「正直」の6項を説き、領内一般に示した教訓という。このほか但馬(兵庫県)の庄屋、西村次郎兵衛が残した「親子茶呑咄(ちゃのみばなし)」から「おかげさまの気持ちを忘れるな」「指導者の自覚と自己批判を忘れるな」「成果主義と温情主義の中道をいけ」「従業員には親心で接して情けをかけよ」「後継者は人物本位で選べ」「引退後は後継者を引きたてよ」という主人としての心得を説明した。
遺された格言、教訓、心得には、日本人が大切にしてきた思いが込められている。「現代最強」とまではいかずとも、組織運営や人材育成に生かすことができる。(笑)