御坊で会津藩士寄贈の椀見つかる

 幕末の会津の偉人、会津藩士の山川浩が、鳥羽伏見の戦いの敗走中に熱病を患い、御坊市の当時の小松原村に落ち延びた際、旅人宿「中屋」を営んでいた中野家の手厚い看護を受けたお礼に贈った会津塗りのお椀5客などが、ことしになって御坊市内で見つかっていたことが分かった。明治中期、明治政府の役人も務めた山川と中野家が交流していたことを裏付ける貴重な史料で、150年の時を超え、会津と日高の交流の歴史が再び脚光を浴びる発見となりそうだ。
 山川浩は1868年(明治元年)1月3日に始まった、幕府と薩長が戦った鳥羽伏見の戦いで幕府軍の主力である会津藩を率いたが、敗れて退却。紀州藩を頼って和歌山へ落ち延びた。山川ら会津藩士1800人余りが加太から海路で由良に移動。陸路、峠を越えて2里先の小松原村(現在の御坊市湯川町小松原)にたどり着いた。当時、住民には「厳重に戸締まりして落ち武者を中に入れないように」とのお達しが出ていたが、「中屋」の女将おこうは、会津藩士の惨状を見かねて招き入れた。その中には山川もいて、腸チフスと思われる病にかかっていたが、中屋での看護のおかげで回復。1週間程度滞在したとみられ、由良から船に乗って江戸に旅立った。山川はその後、高潔な人柄と卓越した能力で陸軍少将まで昇進。軍籍のまま初代の東京高等師範学校の校長等を歴任したあと貴族院議員を務め、1898年に男爵に叙せられた。
 中屋で受けた恩義を忘れず、14年後の1882年(明治15年)5月、明治政府の役人となっていた山川は名古屋から大阪への転勤を機に、中屋から「中吉」に屋号を変えて場所も本町に移動して営んでいた中野吉右衛門に感謝の手紙と九谷焼の大皿2枚を送り届け、山川と中野家の交流はその後も続いたとされていた。
 交流の歴史を以前から知っていた大谷呉服店(御坊市)の大谷春雄さんや天性寺(同)の津本京子さんが、吉右衛門のひ孫にあたる中野健さん(63)=横浜市在住=に九谷焼の大皿の所在を問い合わせるはがきを送ったのがきっかけとなり、ことし1月、十数年空き家となっている本町の実家を中野さんが調べると、お椀や古文書などを発見。古文書などを解読すると、大皿が届けられた時、吉右衛門は宝物として子孫に残していこうと、日高地方の大庄屋である江川の瀬見善水に頼み、歌と説明文を書き添えて大切に保管したことや、会津塗りのお椀5客は、東京師範学校長となっていた山川が1888年(明治21年)5月、学事巡視のため大阪や和歌山への出張を命じられた際、実際に中吉を訪ねて贈っていたことが判明した。
 中野さんは「大谷さんや津本さん、由良町の大野治さんや小出潔さんのご支援で祖母、両親、親戚の誰からも聞いたことのない先祖の歴史を知ることができて、大変感謝しています。中吉旅館の子孫全員でこの歴史を共有していきたい」とし、「紀州日高で会津兵を助けた逸話がほかにも多く残っていることも学びました。戊辰150周年を機に、日高と会津の友好関係が発展することを願っています」と話している。大谷さんは「御坊で助けられていなければ、のちの山川さんはなかったといっても過言ではない。明治中期、山川さんと中野家の交流は御坊でも大きな話題となっていたようです。この素晴らしい交流の歴史が再び脚光を浴び、多くの人に知ってもらうきっかけにしたい」と話している。
 

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