被害者救済は問題ないか

 今年6月、組織的犯罪処罰法の陰に隠れて成立、7月から施行された性犯罪の厳罰化を主とした刑法改正を受け、兵庫県警が32歳の風俗店員の男を強姦容疑で逮捕した。被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪の規定が撤廃され、告訴はないが、逮捕に踏み切った。
 事件が起きたのは2014年9月。容疑者は深夜に集合住宅の駐輪場で女性を襲い、性的暴行を加えた。警察は被害届を受けたものの、犯人の処罰を求める告訴はなかったため、遺留品等から容疑者をほぼ特定しながら、逮捕していなかった。
 被害者はなぜ告訴しなかったか。親身になって寄り添ってくれた女性警官や弁護士からいろんな話を聞いただろう。告訴することで犯人は逮捕されるが、その後の裁判では加害者側の弁護士から、傍聴人の前でまるで自分に非があったかのような尋問を受けることもあるという。
 強姦や強制わいせつ事件の被害者が告訴を躊躇う理由として、この事件後の法廷における「二重レイプ」がよく挙げられる。が、実際は損害賠償の有無も決して小さくはなく、今回の法改正に、被害者救済が損なわれると危惧する声もある。
 従来の親告罪では、加害者は被害者に誠意を尽くし、告訴さえ取り下げてもらえば逮捕・起訴されずに済んだ。そのためなら、損害賠償を払って示談したいと考えるのは当然で、被害者も告訴で1円も弁償されなくなるよりも、示談に応じた方が二重レイプと合わせて苦痛は小さい。
 殺人や傷害事件では、服役すれば罪を完全に償ったと考える犯人、家族がほとんど。多くの被害者は損害賠償請求に勝訴しても払ってもらえず、泣き寝入りしているのが現状である。この点、今回の非親告罪化は被害者にどう影響するのか。    (静)

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