若者のヤバイがヤバイ
- 2017/6/23
- 日高春秋
かっこいい、良い、悪い、すごい、感動した、困った、緊張する、寒い、テンションが上がる、うれしい、悲しい、気まずい、うまい、怖い、熱い、冷たい、かわいい、高い、安い、楽しい、優しい、汚い、まずい等々。最近の若い人が使う「ヤバイ」には、これでもまだ足りないほどの意味があるそうだ。良い、悪いや熱い、冷たいは反対の意味だが、「不都合である。危険である」(広辞苑第五版)が意味のヤバイをその場の空気に合わせて表現に用い、コミュニケーションを成立させるという。少し前、バラエティー番組で面白おかしく取り上げられていた。
二十数年前の大学生時代、何が起こっても「しけた」と口にしていたことを思い出した。誰が言い出したのか分からないが、友人の間でとにかく「しけた」と言えば会話が成立、コミュニケーションも取れた。「不漁である。転じて、金まわりが悪い。不景気である。また、気持ちなどが、何となくぱっとしないでいる」が意味の「しける」(広辞苑第五版)が若者の「ヤバイ」と同じように幅広い意味を持つようになったのだろうか。自分自身も似たような言葉遣いをしていたことがある。
新聞記者になってから「同じ言葉、言い回しをするな」とよく注意された。勝つなら、下す、破る、退けるなどのように言い換える。もっと言えば大勝、快勝、辛勝など内容がより読者に伝わるように表現し、記事を書かなければならない。文字で多くの人に伝えるのに「ヤバイ」は通用しない。「しけた」でも済ませられない。
記者は時間内に最適な表現を選び、記事を書くのが仕事。読者に内容をしっかり伝えられるように、日ごろから多彩で的確な言い回しを心がけたい。 (賀)