名器グァルネリの深い音色

 中学生の頃バイオリンの名器が登場する「二つのバイオリン」という漫画を読んだ。よく知られるストラディバリウスではなかったことしか覚えていなかったが、先日開かれた㈱駒井ハルテック主催、由良町と同町企業メセナ協議会共催「渡辺玲子リサイタル」でその名を思い出した。グァルネリだった◆渡辺さんが演奏した楽器は1736年製グァルネリ・デル・ジェス「ムンツ」。日本音楽財団から貸与を受けているという。「輝く高音のストラディバリウス」に対し、グァルネリは低音に定評があるそうだ。最も低い音の弦1本のみで奏でられた「G線上のアリア」は、心を落ち着かせてくれる深い響きで会場をゆったりと流れるようだった。ウィーン風のワルツ、華やかな歌劇の曲、情熱的なジプシー音楽と曲目は多彩で、後半で渡辺さんは迫力みなぎる演奏のあと「このバイオリンには汗の一滴たりともつけてはいけないんですよ。300年前のニスに塩分がつくと変質して大変なことになりますから」と説明。あらためて、時代を越えてきた名器の重みを知った◆取材後、ネットで調べてみた。バルトロメオ・ジュゼッペ・アントニオ・グァルネリは同時代のアントニオ・ストラディバリと並び称されるが、実は対照的な2人。ストラディバリは勤勉で天才と呼ばれた。グァルネリはあまり資料が残っていないが酒などで生活が荒れていたらしく、天才というより「奇才」と表現される。ネット上では「グァルネリの深い音色が好き」という声も多くみられた◆ストラディバリウスとは違った個性のグァルネリ。数十年前に名前だけを知った名器の本物の音に生演奏で触れる、実に有意義なひとときだった。「G線上のアリア」の温かい音色は今も耳に残っている。    (里)

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