被災者の心に寄り添う

 マンションで暮らしている高齢女性が、先立った夫の遺影に何気ないことを話しかけていたとき、突然大きな揺れが起こった。女性は同居の家族に支えられながら外に脱出し、近隣の住民にも助けられて高台へ避難した。先日、車の運転免許更新講習を受講した際、講習の始まる前から部屋のモニターで流れていた啓発ビデオの内容である。運転免許の更新に来て地震に備える話を聞くと思っていなかったので少し驚いたが、防災意識を高めるいい取り組みだと感じた。
 免許更新のすぐあとに取材で訪ねたみなべ町の岩代小学校は、東日本大震災の被災者に児童手作りの梅干しを届けようと、3月に宮城県気仙沼市を訪問予定の紀州梅の郷救助隊に託した。救助隊の尾崎剛通隊長いわく、被災地で仮設住宅生活を送っている方々は「被災地、被災者のことが風化していくのではないのか」と不安を抱いているのが現状なのだと。あの衝撃の津波の映像は多くの人の目と記憶に焼き付いている。復興も着実に前進しているのは間違いない。しかし、元の生活を取り戻していない被災者がまだたくさんいることを、どれだけの人が関心を持ってみているかとなると、風化という言葉が出るのも少し分かる気がする。
 梅の郷救助隊は気仙沼で住民と交流する際にゲームの景品となる物品の提供を呼びかけている。尾崎隊長は、「一言でいいので手書きのメッセージを添えてほしい」と求める。被災者を元気づけるのは物ではなく人の温かみであり、心のこもった言葉であろう。人を元気づけられるのは人。心の交流を続ける梅の郷救助隊は和歌山県の誇りであり、手本。こんな活動にこそ大いに支援をお願いしたい。 (片)

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