雅楽に見た日本文化の魅力

 平成28年度市民教養講座の最終回講師は雅楽師の東儀秀樹さん。CMで、篳篥(ひちりき)でユーリズミックスというイギリスのグループの曲を演奏していたのをよく覚えている。低音から高音へ伸びやかに上がっていく明るいメロディーに、柔らかな音色がよく合っていた◆講演では淡々とした口調で話しながら、「ぼくはとても才能があるので」などすまして述べては笑いを誘う。クールな語り口の奥から日本文化や音楽への情熱がにじみ出てくる内容であった。雅楽を深く知ることでどんないいことがあるのか解説してくれた。古典文学、たとえば「源氏物語」に笙や篳篥はよく登場。主人公の光源氏が明石行きを前に親友の頭中将と別れる場面があり、ここで付き人が篳篥を吹く。「楽器を知っていれば物語の背景も見えてくる。篳篥は人のうたう声に似た切ない音色。この場面にはその切ない音がよく合う。想像しながら読むことで物語も明確になるし、紫式部の演出力を楽しむこともできる」との説明はなるほどと腑に落ちた◆現代に残っている雅楽は儀式用の音楽だが、平安時代などは笙や篳篥が日常にもっと自由に使われていたはずという。「花が咲いたから宴を開こう、音楽をやろう」と。ホルストの「ジュピター」を篳篥で奏で、「僕は根っから音楽が好きで、篳篥で『ジュピター』を吹いたら素敵だな、とごく自然に思った」との言葉に、昔CMで聴いたどこまでも自由に伸びていく豊かな音色を思い出した◆豊かな抑揚を持ち品の高さを感じさせる雅楽楽器の音色。それは外界の文化を豊かに取り入れながら一方では1400年もの長きにわたり伝統を守り続けている、柔軟さと誇り高さを併せ持つ日本文化そのものであるような気がした。 (里)

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