失われてしまった田舎の安心

 今月10日、田辺市龍神村柳瀬の県道沿い山の斜面でブルーシートにくるまれた男性の遺体が見つかった。司法解剖の結果、遺体には右肩に刺された跡があり、田辺署内に捜査本部を設置して殺人・死体遺棄事件として調べを進めている。しかし、いまのところ犯人は捕まっておらず、地元からは「一日も早く犯人が逮捕されないと不安」という声も聞かれている。
 龍神村は清流日高川が流れる静かな地域。当初、住民の大半は「遺体は村外の人ではないか」と思っていたが、「村内の男性だった」と身元が判明すると、「まさか…」と大きな衝撃があった。被害者の近所の住民の一人は「隣近所はみんな家族みたいなもので、平和な村なのに…。とにかく残念」と無念さをにじませた。
 龍神村に限らず、日高地方のような片田舎は都会と比べれば凶悪犯罪の発生件数は少なく、昔は外出する時や寝る時でも鍵を掛けないという家庭も多かった。しかし、最近ではそういう家庭は少なくなったようで、犯罪に対する警戒が強くなっているといえる。残念なことだが、それだけ安心な暮らしが失われているということだろう。現実はどこでも凶悪犯罪が起きてしまう社会になったといえる。
 その理由を考えてみると、▽外貨を稼ぐために観光客らを呼び込むことで都会からの流入人口が増えた▽インターネットの普及で都会との情報格差がなくなった▽住民間の絆も薄れている――などが挙げられる。
 だからと言って、「治安の悪化は豊かな生活の代償。仕方がないこと」と、簡単に片付けてしまっていいものなのか。田舎の良さの一つが消えつつある。 (雄)

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