成人の日の涙の理由

 成人の日、各市町の式典会場にはお母さんの姿も多く、わが子の成長に喜びいっぱい、ハンカチで涙をぬぐう方もおられた。うれしかったこと、悲しかったこと、しんどかったこと…思い出とともに胸にこみあげるものがあったのだろう。
 人の記憶はよくも悪くも、時間の経過とともに薄れる。「どんなに悲しいことも、いつか時間が解決してくれる」という言葉も、決して間違いではないだろうが、傷の大きさ、深さによっては、悲しみを感じるまでの時間や、それが継続する時間に個人差がある。
 昨年11月、山田太一が脚本を書き、渡辺謙が東日本大震災の津波で家族を失い、いまも心の傷が癒えない主人公を演じたドラマが放送された。あの日から「5年も」たったいま、東北の被災者は気持ちを整理して前へ踏み出しているかのようだが、なかには震災直後よりいまの方が辛い人もいる。5年という時間は長いようで短い。
 同じ渡辺謙が主演の映画「明日の記憶」の原作の著者荻原浩は昨年、短編集「海の見える理髪店」で直木賞を受賞した。その中に収められている「成人式」の主人公と妻も、5年前に15歳だった娘を交通事故で亡くし、その死から立ち直れていない。
 ある日、成人式用の着物のカタログが死んだ娘あてに届く。一度はごみ箱に捨てるが、夫婦はこのままでは2人ともだめになってしまうと思い、冗談半分、悲しみを断ち切るために、妻が娘の替え玉となって成人式に出席しようと奮闘する。
 日高地方でも、失意のなかで成人の日を迎えた方もおられるかもしれない。時間とともにその悲しみが癒やされ、止まった時がいつか、再び動き始めると信じています。  (静)

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