「言葉は次々と光る」

 平成28年度第5回市民教養講座は、俳人の夏井いつきさんが講師。講演会というよりは、ライブ感あふれる実践的な俳句教室そのもので、思った通り大変楽しかった◆ほとんどの来場者は句を詠んだ経験がない様子だったが、夏井さんは、「俳句の裾野を耕すのが私の仕事」と言い、「皆さんに『俳句をつくれる体』になって帰っていただく」と宣言された。まさか、本当にそんなことができるのだろうかと思いながら、前半の俳句を作るコツなどを拝聴していた◆コツを分かりやすく説明した夏井さんから参加者に「和」というお題が示され、5分間で1句詠むようにとの課題が与えられた。だらだら長く書くのは好きだが短くまとめるのが苦手で、中学校の国語の授業以外に句を詠んだ経験のない筆者には神業とも思える。そんなことが本当に…と思っていたら、本当に皆の俳句を書いた紙が次から次へと回収されていった。一応試しに5分間考えたものの結局何も思い浮かばなかった筆者は、迅速に集められ前へ運ばれていく紙の束に見とれる思いであった。そして発表された入選・特選句の多くは「生まれて初めてつくった」という作品。「俳句の裾野を耕す」という冒頭の夏井さんの言葉がここで実感をもって迫り、さすがと感じ入った◆講師紹介では、プロフィルと共に「風光る言葉は次々と光る」との夏井さんの句も紹介された。十七文字というごく短い枠の中で言葉と言葉が最適の出会いを果たし、光を放つのが俳句。一字一字が意味を持って機能する日本語の繊細で柔軟な力を思うと、この短い枠が、無限に広がる奥行きを持つ立体的なキャンバスにも思える。日ごろ言葉を扱う仕事だが、あらためて言葉の力と可能性をみる思いがした。 (里)

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