御坊市島、浄土真宗本願寺派の善妙寺(木下眞人住職)で、230年前の再建以来初めて行われていた本堂の天井画の描き直し作業が完成し、新しい152枚が天井に取り付けられた。花鳥風月をモチーフにした日本画で、日本画家の鈴木薫さん(日高町小坂)の指導で平成23年10月からスタート。5年の歳月と門徒らボランティア約20人の地道な作業で色鮮やかに生まれ変わった。11月13日に落慶法要を行う。
本堂が再建された230年前に取り付けられたとみられている天井画は、大きさが40×42㌢と35・5×37㌢の2種類合わせて152枚。いずれも色があせ、破れるなど老朽化していた。
木下住職が描き直しを相談した知人が、日本美術院院友の鈴木さんに絵を習っていた関係から、「絵を通じて地域貢献ができるのなら」と鈴木さんが中心となって事業が動き出した。「せっかくの機会なので、門徒の皆さんと一緒に描きたい」と声をかけると、約15人の有志が集まり、月1回、本堂での新調作業が始まった。
初心者がほとんどの中でも、「日本画にこだわりたい」との鈴木さんの意向で、「水干絵の具」と「にかわ」(動物や魚のコラーゲンから抽出した接着剤)を混ぜて作る日本画独特の絵の具を使い、思い思いの絵にチャレンジ。鈴木さんが一点一点を手直ししたほか、鈴木さんが指導する御坊市文化協会所属の鈴蘭会、日高町文化協会所属のすずらん会の生徒も加わり、総勢20人以上で5年かけてようやく完成した。キキョウ、ユリ、ツバキ、ハスなどの花や鳥、中には龍やダイナミックな波の絵もあり、色鮮やかでバラエティーも豊か。絵の周りには金箔も張り、華やかに仕上げた。
すでに天井に取り付けられ、これまで以上に本堂が明るくなった。鈴木さんは「初めは不安でいっぱいでしたが、それぞれの個性が出てきて、月1回行くのが楽しみになりました。絵の具を作ることから始めたので、皆さん大変だったと思いますが、技法や技術ではなく、一生懸命描いた皆さんの気持ちが伝わる素晴らしい作品になりました。仏様も喜んでくれていると思います」と笑顔で話している。木下住職は「最大の功労者である鈴木先生はじめ多くの方々の協力に感謝しています。本堂に上がって、ぜひ見に来てください」と喜んでいる。
落慶法要は、報恩講法要に合わせて行う。午後1時半から勤行、2時ごろから記念式典として関係者への感謝状贈呈や記念法話、4時から祝賀会を開く。