強くなくても生きていける

 元俳優の男が覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された。2月の元プロ野球選手に続く有名人の逮捕だが、スマホの速報を見て驚きも何も感じなかった。テレビでのやんちゃな言動からも、多くの人は元プロ野球選手と同じ記憶の引き出し、それも奥の方に入っていたのでは。
 覚醒剤は一度でも使用すれば、自分の意志ではやめられないというほど依存性が強い。誰もが悪い、危険なものと認識しながら手を出すのは、使用時の快感と興奮以上に、ギャンブル同様、周囲の仲間が楽しんでいるという薬物に親和的な環境があったはず。
 先日、日高川町で精神障害に苦しむ当事者(本人)の講演会が開かれた。講師の女性は双極性障害、境界性パーソナリティ障害、摂食障害などの病気のほか、アルコールや薬物の依存に陥り、何度も自傷、自殺未遂を繰り返しながら、現在は適切な治療によって、仕事をしながら落ち着いた生活を送れているという。
 自身は病気のきっかけを、幼少期の家庭環境にあると分析する。両親の愛情をまったく受けられなかったために、人の愛情がどういうものなのか分からず育ち、援助交際の相手の言葉を本当の愛情だと信じ、逆に本当の彼の言葉を「こんな幸せが私にあるわけがない」と否定してしまった。
 彼女のような精神疾患を患いながら、依存症に陥った人は、生きることの苦しさのあまり、自ら命を絶ってしまう人も少なくない。懸命に支えてきた家族や周囲の人たちは救えなかった自分を責めるが、頑張って生きているから「強い」のではなく、自殺したから「弱い」のでもない。
 興味本位、ファッション感覚で手を出す芸能人の覚醒剤事件よりも、私たちはもっと目を向け、考えなければならない社会の現実がある。(静)

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