アールブリュットを知って
- 2016/6/4
- 日高春秋
アールブリュットという言葉をご存じだろうか。恥ずかしながら、筆者がこの言葉を初めて聞いたのは昨年のこと。フランス語で「生の芸術」と訳され、美術教育を受けていない人が生み出した絵画や造形などを意味している。日本では、障害のある人が描いた絵などの作品という使われ方が浸透している。アールブリュット作品は純粋にアートとしての評価が高く、大手ファッションメーカーがオリジナルブランドとして作品を採用するなど全国に広がっているのは既報の通り。高い芸術性はマーケットの需要を高め、供給者である作者には著作権料として収益が還元される。こんな画期的な取り組みを全国に先駆けて行っているのが御坊を拠点に活動しているNPO法人であることを知ったのは、つい数日前である。
代表を務める玉置徹さんいわく、描いた作品が評価され、収益を生み出すことで新しい就労の形となるだけでなく、本人の生きる喜び、そして保護者にとって大きな喜びになっていることがうれしい、と。障害のある人の中には、引きこもってしまう人も少なくない。本当にサポートが必要な人への気配りが足りていない現状があることも教えてもらった。
障害があろうとなかろうと、隔たりもなく日常生活を送る社会こそが当たり前であり、本当のバリアフリーであろう。それは一人一人の意識の持ちようであることにほかならない。玉置さんの取り組みをもう一つ。先月20日、薗地内の日高別院近くにアールブリュットミュージアムとカフェバーを併設した倉庫ミュージアムをオープンさせた。入りやすく、おしゃれで、アールブリュットに気軽に触れられる場所。一度足を運んでみては。(片)